上写真=59分からピッチに登場し、さすがの調整力を発揮した柴崎
ベネズエラ戦(11月16日)から大幅に選手を入れ替え、これまで出番の少なかった選手を起用したキルギス戦(11月20日)はベンチスタートとなった。ただ、59分に投入されると、バランスを見ながら高い位置を取り、ボールを引き出して攻撃を活性化させた。プレーしたのは短い時間ながら、柴崎岳のゲームを読む目とポジショニングセンス、パス能力は、やはり代表チームに欠かせないと思わせるものだった。
「バランスはボランチのところで保たないと」
2-0とリードし、相手を一方的に押し込みながらも追加点を奪えずにいた後半、柴崎は三竿健斗に代わって登場した。そこで見せたのは、初めて一緒にプレーする選手もいる中で自身のチャンネルをチームに合わせつつ、『チームを回していく』クレバーな姿だった。ゲームを一気に動かすパスや局面を変えるパスこそ見られなかったが、バランスを見つつ、チームを活性化させるべく努めていた。この調整力やチームのハンドリング能力も、柴崎の大きな魅力だ。
「追加点をしっかりと取りに行きたいと思っていましたし、試合の展開自体も後半にあえてスローダウンするのではなく、チームとして上げていかなきゃいけない部分もあったので、僕が入ってからはそういうところを意識して、テンポよくプレーしながら、あとは周りの前線の選手が入ってきてリズムが変わった部分もあるんで、中だるみせずに、自分たちの求めるインテンシティというか、求める形というのを、主体的に表現していけたんじゃないかなと思います」
前線の構成が変わったことでチームが動き出したのは確かだが、そこに柴崎のハンドリングがあったことは見逃せない。
「今日はなるべく低い位置でボールを持つことを避けようというか、減らそうと思っていました。守田(英正)とCB2枚の3枚で(ボールを)運ぶように。僕は関わったとしてもクッションぐらいの役割で、彼らに持ち運ばせることができたらいいと思っていたので。僕の仕事はもうちょっと前の方かなと。きょうはそういった形にはなっていたと思います」
この日は初めて守田英正とボランチでコンビを組んだ。ただ、誰と組んでもボランチとしての自分の役割は大きくは変わらないと言う。要(かなめ)となるのは、バランスだ。
「誰と組んでもバランスというのはボランチのところで保たないといけないですし、そこは当然意識しています。タイプ的にはどちらかというと、後ろに重きを置くタイプと攻撃に行けるタイプと組み合わせて、森保監督は使っているのかなとは思うんで、そういう意味では彼ら(守田、三竿健斗、遠藤航)のような低い位置から組み立てるタイプとかバランスを取ってくれるタイプというのは僕としてはやりやすい部分がありますし、そのぶん僕がある程度、前のポジションを取りながら前線の4枚と絡んでいくという形を作れるんじゃないかなと思っています」
後ろに引きすぎず、高い位置取りで前線に絡み、現チームの強みを最大化させる。それが狙いだった。足元でボールを受けてカットインを狙う両サイドMFの持ち味を生かしたわけだ。状況によって選択を変えられるのも、柴崎の持ち味。当然、攻撃の幅を取ることが必要になったとき、裏に飛び出す選手が前線にいるときには、別の選択となる。
現チームでのボランチの役割、在り方について柴崎は「森保監督の求めるサッカーの中でのボランチというポジションの意味というか意義を、しっかりと理解しながらやっていきたいと思いますし、それが表現できなければ、メンバーに入らないだけだと思うので。しっかりと僕らの個人の特徴とか、良い部分を表現しつつ、チームの戦術を理解しながら表現するのが大事かなと個人的には思っています」と話した。
「(チームは)順調には来てるかなと思います。とはいえ、ゴールはまだまだ先なので。まだ(発足から)3カ月ですし、多くのことはやれてないと思います。監督自身も見定めているところはあると思うので、チームの成熟度という点ではアジアカップを通して、大会を通して、試合の中で成長していく必要があると思います。まだワールドカップの予選までも時間もありますし、1試合1試合の中で選手が成長し、チームも成長していくというのは、やっていかなければいけない。ただ段階的に、この3カ月はいい状態できているのかなと個人的に思います」
着実に前進するチームの中で、柴崎も存在感を高めている。10月シリーズに比べ、11月シリーズではコンディションも上がっていたように映る。今後も所属するヘタフェでコンスタントに試合に絡めない状況が続き、著しくコンデイションを崩すようなら心配だが、少なくとも11月シリーズにおいては変わらずチームの中心でプレーすべき選手であることを証明した。
現在の日本代表の攻撃面の強みを生かし切ること。そしてアジアナンバー1の座をつかむこと。その先にある代表チームの完成形までも、柴崎はしっかりとイメージしている。
取材◎佐藤 景 写真◎早浪章弘