上写真=開始2分に先制ゴールを挙げた山中をチームメイトが祝福する(写真◎Getty Images)

 森保ジャパンのレギュラー格が先発したベネズエラ戦と、先発全員を代えて臨んだキルギス戦。日本は勝利を収めたものの、レギュラー格と控え組の現時点における『違い』を浮き彫りにする内容となった。

■11月20日 キリンチャンレンジカップ2018
 日本 4-0 キルギス
 得点:(日)山中亮輔、原口元気、大迫勇也、中島翔哉

指揮官は近々、欧州視察へ

 相手との力の差は歴然だった。5バックの前に4人のMFが並び、守備に軸足を置く相手に対し、日本は試合開始早々の2分にゴールを挙げる。北川航也の縦パスを杉本健勇が受けてオーバーラップしてきた左サイドバックの山中亮輔に流すと、山中はその勢いのまま得意の左足を振り抜いてネットを揺らした。
 山中の代表デビュー戦でのゴールを機に、さらに攻勢を強めた日本は19分にも原口元気がFKを直接沈め、追加点。その後も相手を押し込み、ハーフコートゲームを展開した。

 だが、ゴールには迫るものの、伊東純也や杉本健勇のシュートは枠をとらえず、なかなか3点目が生まれない。ようやく追加点が生まれたのは、後半に入ってからのこと。杉本が大迫、伊東が堂安律、三竿健斗が柴崎岳、槙野智章が吉田麻也に交代した後だった。

 72分、守田英正のクサビのパスを受けた北川がエリア内でターンすると、やや流れたボールをすかさず大迫が拾ってシュート。キルギスを突き放す3点目が決まった。そしてその1分後、今度は北川に代わって入った中島翔哉がネットを揺らす。堂安のスルーパスに反応したナンバー10が右足で冷静にゴールをとらえた。

 日本が相手を押し込む展開ながら、なかなか得点が生まれずにスタンドはやや重たい空気に包まれていた。しかし原口に代わって南野拓実もピッチに入り、大迫、中島、南野、堂安という森保ジャパンの金看板である前線のカルテットが形成されると、雰囲気が一変。ピッチに躍動感がもたらされ、連続ゴールが生まれたことで一気に活気づいた。

 戦前、指揮官は選手層の拡充を11月シリーズの狙いの一つとして挙げていたが、結果的に、これまでレギュラー格としてゲームに出てきた選手たちの力をあらためて確認することになった。一緒にプレーした時間の違いや後半になって相手が疲れたことを差し引いても、サブ組との差は大きいと言わざるを得ない。「誰が入ってもレベルを落とさず、同じコンセプトのもとでプレーする」という指揮官の考えを現実のものとするには、まだまだ時間がかかるだろう。 
 
 試合後の会見で指揮官は、そのことを当然のこととしてとらえ、今後に向けて今回のトライがプラスになると説明した。

「途中出場の選手が流れを良くするということ、試合を締めるという部分や、あるいは試合を落ち着かせるとか、チームを活性化してくれたことはベネズエラ戦から修正できたと思っています。今後の試合でも、途中出場の選手がしっかり役割を果たすことを、やっていければと思います。
 選手起用の中で、すべての選手が同じレベルではないのは、グループの中であり得ることです。まだまだ経験が足りない選手に関しては、力の部分でまだまだ足りなくても、伸びしろがある選手たちということで、可能性という部分で招集している選手もいます。今はまだ実力的には足りない部分がある選手も、日本代表での試合経験を通してさらに伸びてくれると思っています。試合をして気づいてくれた部分も自分のチームに持ち帰ってもらって、レベルアップにつなげてもらうことが日本代表のさらなる戦力アップにつながると思います。
 力の差があるにしても、現段階では当たり前。普通のことだと思います。経験の浅い選手たちが、経験があるベテランの選手や実力差がある選手と同じピッチに立つことで、相乗効果が生まれ、両方の選手たちが成長し、融合する。今チャレンジしていることは、これからもチャンスがあれば続けていきたいと思います。
(2列目の選手たち=中島、南野、堂安に追い付ける選手はいるか? という質問に答えて)まだまだいると思います。国内だけでなく、海外でプレーする力のある選手もいます。ベネスエラ戦での前線の選手に追いつける選手はいると思います。力の差がある部分はあると思いますが、トレーニングでいろいろと選択肢を出して、選手に働きかけることが自分自身の課題だと思っています。とくにこれから伸びていく選手については、自分の責任だと思っています」
  
 アジアカップ前最後のテストマッチは、現時点のチームの強みと課題を明確にした。ここまで出番が少なかった選手が多くの時間プレーしたキルギス戦で、自身の持ち味を示したと言える選手は限られる。90分プレーした守田と、先制点を挙げてその攻撃力を示した山中くらいだろうか。今後への期待感という点で言うなら、ほかにも可能性を示した選手はいる。ただ、この試合でレギュラー組を脅かす存在がいたかと言えば、答えはノーだろう。

 指揮官は近々、関塚隆技術委員長とともにヨーロッパで選手を視察するという。前日会見でも話に出ていたが、これまで森保ジャパンに呼ばれていない選手をアジアカップに招集するかもしれない。
 アジアナンバー1の座を争うアジアカップは、当然ながら11人だけで戦える大会ではなく、サブも含めた日本の総合力が問われる大会だ。つまりは、その時点のベストで臨むべき舞台。
 日本の初戦は2019年1月9日、トルクメニスタン戦。そこから中3日でオマーン戦、ウズベキスタン戦と続くハードな日程が待っている。

取材◎佐藤 景 写真◎Getty Images


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