フランス

画像: フランス◎6大会連続15回目:1930、34、38、54、58、66、78、82、86、98、2002、06、10、14年 / FIFAランク◎7位 / 監督◎ディディエ・デシャン

フランス◎6大会連続15回目:1930、34、38、54、58、66、78、82、86、98、2002、06、10、14年 / FIFAランク◎7位 / 監督◎ディディエ・デシャン

各ポジションにタレントをそろえ、自国開催の1998年大会以来の優勝を狙うフランス(写真◎Getty Images)

世界制覇は指揮官の「黄金采配」次第

 母国開催だった1998年に続き、20年ぶりの優勝を狙う戦力を持つ。もっとも、実際にはパリで戦ったEURO2016決勝で、ポルトガルに番狂わせを演じられたショックから立ち直れているかどうかが、世界王座返り咲きの可否を大きく左右しそうだ。
 明確な答えは、予選からは見えてこなかった。オランダ戦の大勝(4-0)を眺めれば、デシャン監督率いる若き「レ・ブルー」は、エキサイティングな攻撃集団と映る。だが、弱小ルクセンブルクとホームでスコアレスドローに終わった一戦を見る限り、見どころのない機能不全の集団だと思われた。「ジキルとハイド」のような二面性は、2点差を覆されたコロンビア戦をはじめ、予選突破のノルマを果たした後のテストマッチでも顔を覗かせている。
 とはいえ、各ポジションにトップクラスがそろう個々の質は、優勝候補に相違ないハイレベルだ。ゴールマウスには世界屈指のGKウーゴ・ロリス。その前には最速CBのラファエル・バランを擁し、中盤ではエンゴロ・カンテがボール奪取に奔走し、ポール・ポグバがダイナミックに攻め上がる。指揮官が好む4-2-3-1の前線では、一級品のアントワーヌ・グリーズマンと、新天地チェルシーで調子と得点数を上げてきたオリビエ・ジルーがコンビを組む。キリアン・ムバッペやウスマン・デンベレをオプションに持つ層の厚さもトップレベルだ。あとは、2012年から指揮を執るデシャンが、居並ぶタレントをうまくブレンドさせられるか、だ。ロシアの地で“ゴールドブレンド”の香りを放つチームをピッチに送り出せれば、自信を深めながら勝ち上がり続けるはずだ。

文◎クライブ・バッティ 翻訳◎山中 忍

オーストラリア

画像: オーストラリア◎4大会連続5回目:1974、2006、10、14年/ FIFAランク◎40位 / 監督◎ベルト・ファンマルバイク

オーストラリア◎4大会連続5回目:1974、2006、10、14年/ FIFAランク◎40位 / 監督◎ベルト・ファンマルバイク

オランダ人の名将を新指揮官に迎え、オーストラリアは2006年大会以来のグループステージ突破を目指す(写真◎Getty Images)

予選から続く混乱への最適解は?

 かなり苦しんだ予選だった。最終予選では勝ち切れない試合が多く、グループ3位となって別組3位のシリアと、さらにホンジュラスとの大陸間プレーオフを制して、ようやくロシア行きを決めた。  だが、ハッピーエンドとはならなかった。出場権獲得後、アンジェ・ポステコグルー監督が退任。フィジカルを生かしたパワフルなプレーから、ボールを保持して崩すサッカーへと大きく転換してきたこの数年間が、根底から覆されることになった。  後任には、サウジアラビアで自らつかんだ本大会行きを手放したファンマルバイク監督が就いた。短い期間でのチームづくりに、経験豊富な指揮官も頭を悩ませている。  本大会に臨む23人のメンバーのなかには、イランも招集に興味を示していたダニエル・アルザニという実力が未知数の若者を初招集。果たしてこれを、どう見るべきか。  そして、注目を集めるのが、38歳のティム・ケーヒルの招集だ。クラブで1年以上も得点から見放されているが、過去3大会で“サッカルーズ”を牽引してきた実績を踏まえ、「特別な選手だ」と、指揮官もそのオーラに期待をかける。ただ、裏返せば、得点力への不安も大きいのだ。
 ロシアの地でハッピーエンドを迎えるために、直前まで知将の試行錯誤は続いている。

文◎杉山 孝

ペルー

画像: ペルー◎9大会ぶり5回目:1930、70、78、82年 / FIFAランク◎11位 / 監督◎リカルド・ガレカ

ペルー◎9大会ぶり5回目:1930、70、78、82年 / FIFAランク◎11位 / 監督◎リカルド・ガレカ

エースFWゲレーロも代表へ帰還し、万全の状態でロシアに乗り込むペルー(写真◎Getty Images)

エースが復帰し、国民の期待も高まる

 近年、南米ではアウトサイダーに成り下がっていたが、9大会ぶりに大舞台に帰ってきた。コパ・アメリカ王者のチリすら予選敗退を強いられた激戦区を勝ち上がった最大の立役者は、アルゼンチン人のガレカ監督。母国でも名門を率い、常に良質な攻撃サッカーを志向することで知られる指揮官が、長らく低迷していたペルーをよみがえらせた。
 伝統的に個人技を重視し、攻撃的なスタイルを好んできたペルーにガレカ監督が持ち込んだのは、緻密な組織的サッカー。予選の序盤こそ勝ち星に恵まれず低調なスタートとなったものの、2015年のコパ・アメリカで3位に食い込むと、その後は地力を発揮し始める。プレッシングをベースに素早く攻守の切り替えるハードワークがベースだが、攻撃時には確固たるタレントを擁している。その攻撃はショートカウンターが持ち味ではあるものの、「トッケ・ペルアーノ」と称されるテンポの良いパス回しもハイレベル。3月の親善試合ではクロアチアとアイスランドに快勝するなど、本大会に向けて順調なチーム作りが続いている。
 一時は、昨年10月のドーピング違反による14カ月間の出場停止が課せられ、本大会出場が絶望視されていたパオロ・ゲレーロも、暫定措置によって半年間に軽減され、ロシア行きが可能となった。予選でチーム最多タイの5得点を挙げ、本大会でも得点源として期待されるエースFWの代表復帰により、国内の期待も高まっている。ジェフェルソン・ファルファンら、他のベテランも奮起し、グループステージ突破を目指す。

文◎下薗昌記

デンマーク

画像: デンマーク◎2大会ぶり5回目:1986、98、2002、10年 / FIFAランク◎12位 / 監督◎オーゲ・ハレイデ

デンマーク◎2大会ぶり5回目:1986、98、2002、10年 / FIFAランク◎12位 / 監督◎オーゲ・ハレイデ

2大会ぶりにワールドカップを戦う“北欧の雄”デンマーク(写真◎Getty Images)

上位進出の鍵はエース依存症からの脱却

 W杯常連ではないが、過去の戦績は決して悪くない。前回出場の2010年はグループステージで姿を消してしまったものの、他の3大会ではいずれも決勝トーナメントに進出している。通算5度目のロシア大会でも、組み合わせ抽選に恵まれたグループCからの勝ち上がりは堅そうだ。
 祖国ノルウェーを率いたこともあるハレイデ監督の下、チームは自信を得ている。もっとも、ポーランドに次ぐグループ2位に終わった予選での出足は鈍かった。アイルランドとのプレーオフでも、ホームでの初戦はスコアレスドローに持ち込まれた。だが、リターンマッチでは大量5点を奪って力の差を見せた。
 そのアイルランド戦第2レグで見事なハットトリックを達成したクリスチャン・エリクセンを抜きに、このチームは語れない。トットナムでもキーマンの一人であるプレーメーカーは、攻撃の中枢であると同時に、予選でチーム最多の11ゴールを挙げた得点源でもある。ハレイデが好む4-3-3システムの中盤では、ウィリアム・クビストとトーマス・デラネイが、それぞれ攻守のバランス感覚と運動量で創造性あるエリクセンをサポートする。背後の4バックは強度も安定性も十分。最後尾のカスパー・シュマイケルには、起死回生のビッグセーブもある。
 懸念されるのは前線の迫力不足だ。アンドレアス・コーネリウス、ニコライ・ヨルゲンセンは、そろって予選で説得力を欠いた。相手ペナルティーエリア付近でエリクセンにおんぶに抱っこという攻撃事情が続くようでは、98年以来となる8強入りは望み薄だろう。

文◎クライブ・バッティ 翻訳◎山中 忍


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