「相手のほうが上手だった」
この大会で喫した唯一の失点が、前橋育英の優勝を決めるものになってしまった。ここまでゴールに鍵をかけ続けていた2年生センターバックの関川郁万は「3年生が最後(の試合)なので、勝って終わりたかったですけれど、これは結果なんで…」と、肩を落とした。
決勝戦でも、まさに壁となった。前半から空中戦では負け知らず。ハイボールをことごとくはね返し続けた。33分には相手と交錯した際に右足を負傷。足を引きずりながらも、ピッチに立っては、また相手の攻撃を阻み、準決勝まで15ゴールを挙げている前橋育英の強力攻撃陣の前に立ちはだかった。78分に迎えた相手CKのピンチでも、ヘディングシュートをゴール前でブロックするなど、90分までは得点を許さなかった。
だが、後半アディショナルタイムに放たれた前橋育英FW榎本のシュートを守り切れなかった。「前橋育英のほうが上手だったのかな、というのはあります」と、最後の最後で実力不足を痛感した。
それでも、「選手権という素晴らしい舞台で自分たちのプレーを披露できたのは大変うれしいこと」と、準優勝に終わった悔しさを噛みしめながらも前を向く。
「ここは、戻ってこなければいけない場所」
1年後、さらに成長した姿で埼玉スタジアムのピッチに再び帰ってくること、そして、このリベンジを果たすことを誓って――。試合終了のホイッスルは、関川の新たな戦いの始まりを告げた。
文◎小林康幸 写真◎福地和男