日本代表は14日のグループステージ初戦・ベトナム戦に4−2で勝利した。きっちり勝ち点3を積み上げて大会をスタートさせたが、前半は予期せぬ展開となり、一時は逆転を許した。なぜ日本は苦しむことになったのか。右サイドバックとして先発した菅原由勢、77分に途中出場した毎熊晟矢に聞いた。

上写真=菅原由勢はベトナム戦の前半、難しいプレーを強いられた(写真◎Getty Images)

「1人で2人見る形になっていた」

 ベトナム戦の前半、日本は南野拓実が先制した後、しばらくの間、劣勢に陥った。

 ベトナムがボールをつなぐことに長けたチームで、各選手がしっかりとしたスキルを持ち、トルシエ監督によって戦術を仕込まれていたことがその大きな理由だ。

 そしてもう一つ、苦戦の理由として挙げられるのが、システムの噛み合わせの問題だ。前半、ベンチから戦況を見つめていた毎熊に話を聞いた。

「チームとしての相手とのフォーメーションの兼ね合いもあって、なかなかはまってないなっていうのを見てて思っていました。相手のウイングバックとシャドーの選手がフリーでいて、(菅原は)2人を1人で見ないといけない状況になっていた。誰がそこを捕まえるかっていうのが前半ははっきりしていなくて、右サイドバックとしては難しい対応だなと思いましたし、中でコミュニケーションとって変えれる部分は変えないといけないとも思っていました」

 相手は5−4−1で構えたが、日本が採用したのは4−2−3−1。日本の右サイドバックを務めた菅原は、相手の左のウイングバックと2列目の左シャドー(ボランチ)、あるいは左サイドハーフの選手を、しばしば1人で見張ることになった。同じ右サイドバックの毎熊は、その難しさを理解するとともに、自分ならどうプレーするかをイメージしていた。

 守備面で問題を抱えたことで、日本はいい形で前に出られなくなった。その結果、右からの攻めは右サイドハーフ、伊藤純也の単独突破が多くなった。

「純也くんが相手のウイングバックと1対1をする部分が多くて、中に仕掛けても、そのほかに4枚相手がいるので難しかったと思います。サイドバックとしてはウイングバックを釣り出して、(日本の)サイドハーフの選手には相手の3バックの左と勝負させたい。自分が入ったらどうポジショニングするかを考えていましたけど、そういうところを(周囲に)伝えたり、アクションを起こすことによってチームに伝えられればと思っていました」

 毎熊が言う通り、ベトナム戦の伊東は難しい勝負に挑まざるを得なかった。そして右サイドバックの菅原は難しい守備を強いられた。

 毎熊の見立てを聞いたあとで、当事者の菅原に質問をぶつけた。1人で2人を見る状況を改善するにはどんな手があったのか。

「前半は特に僕の前にも選手がいて、近いところで中にも選手がいて確かに難しかった。ただそこで僕が気づいてボランチだったり、センターバックだったり、純也くんに『こういうことをした方がいいんじゃないか』という発信はできたと思う。どれだけそこに早く気づいて、どれだけ早く修正できるかが大事で、自分から改善すべき点でした。後半はある程度修正できたと思うし、やり方をちょっと変えることができましたけど、今度はそれを、しっかり前半のうちにやれるようにしたい。守備としても後手になりすぎた点はあったと思うので、そこはしっかり修正しないといけない」

 菅原からでも、周囲の選手からの発信でもよかったが、結局のところ劣勢の要因を選手間で共有できず、修正はハーフタイムまで待たねばならなかった。守田英正も試合後に言っていたが、前半のうちに4−1−4−1に形を変えて相手のビルドアップに制限をかけられれば、日本が劣勢になる時間を大幅に減らすことができたかもしれない。

 菅原が挙げた改善点は、主に二つ。一つは相手の戦い方やシステムの把握に要する時間を短縮すること。そしてもう一つが、その情報をより素早くピッチ上で共有することだ。

 チームはこれまでもそれら二つの要素を求めてきたが、ベトナム戦で、まだまだ足りないことがはっきりした。アジア制覇、さらにその先の目標である世界一に近づくためには、絶対に高めておくべきポイントだろう。

取材◎佐藤景


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