日本代表をホームに迎え、カタールW杯(1−2)のリベンジに臨んだドイツ代表だったが、1−4で大敗し、屈辱の返り討ちにあった。試合後、ハンジ・フリック監督は日本を称え、完敗を認めた。

上写真=試合中、感情を露わにするハンジ・フリック監督(写真◎Getty Images)

ミュンヘンの屈辱に匹敵する完敗

 ドイツにとってはこれ以上の屈辱もないだろう。リベンジを誓って臨んだ試合で返り討ちに遭ったのだから。しかもホームで大敗である。

 カタール・ワールドカップで2大会連続となるグループステージ敗退を味わい、大会後は再起を誓って歩みを進めたものの、2023年の戦績は1勝1分3敗と振るわず、日本戦の結果いかんでハンジ・フリック監督が更迭される可能性も囁かれていた。

 1−2とリードされて迎えたゲーム終盤、ドイツの選手たちの集中力が切れて、交代出場した日本の選手たちの動きについていけなかった。90分と90+4分に失点し、1−4と突き放されて試合終了の笛を聞いた。

 日本の再三の決定機を防いだGKテアシュテーゲン、右サイドから果敢に仕掛けてチャンスを生んだサネ、そして精力的に動き続けたギュンドアンに対してはドイツメディアも好意的だったが、そのほかの選手たちやフリック監督には辛辣だった。

 単純なパスミスが多く、ボールウォッチャーになってゴール前で人を離す場面など、以前のドイツなら考えられない。日本戦で見せた姿は、チームが深刻な状態にあることを示していた。

 前日会見で発表されたギュンドアンのキャプテン就任も、負のスパイラルから抜け出す一手とはならず。フリック監督は「チームは以前のように悪い雰囲気ではない。色々なアイディアも湧いている」と状態の好転を強調したが、同点に追いついたあと、上田綺世のゴールで突き放されると、劣勢を跳ね返す気力を失ったように映った。

 後半、一番スタンドが沸いたのは、ミュラーがピッチに投入された時だった。藁をもすがるように、大きな拍手と歓声を、追加招集でチームに合流した歴戦の勇に送っていた。

 しかしながら、それ以降、ドイツは1点も返せず、1−4と大敗した。

 思い出されるのは2001年に行われた02年W杯予選。ミュンヘンのオリンピックシュタディオンにイングランドを迎えた一戦だ。1966年W杯の決勝で敗れて以来、ドイツにとってイングランドはますます宿敵となったが、ホームで1−5とまさかの大敗を喫した。若きマイケル・オーウェンにハットトリックを決められている。

 当時、最大の屈辱と報じられ、選手たちは酷評された。今回の日本に対する敗戦はそれに匹敵するほどの屈辱かもしれない。カタールW杯で逆転負けを喫し、今回は雪辱を晴らすどころか完膚なきまでに叩きのめされた。

 ドイツ代表は2020年11月にもUEFAネーションズリーグでスペイン代表に0−6という大敗を喫している。当時チームを率いていたヨアヒム・レーヴ監督に対する批判が噴出し、一気に長期政権崩壊へと動き出すことになったが、その試合はアウェーゲーム。ホームで今回の試合ほど完敗するのは、やはり稀だ。

「日本が試合巧者だった」
「今の我々にはあのコンパクトな守りを突破する力がない」
「選手たちはトライしていたがミスもあった」
「失望も批判も当然だろう」

 フリック監督の敗戦の弁は、日本が勝つべくして勝ち、ドイツが負けるべくして負けたと認めるものだった。

 ドイツは次戦、12日にドルトムントでフランス代表と対戦する。中2日で試合があるため、フリック監督が即刻、更迭されることはないかもしれないが、日本戦の敗戦でいよいよ立場を追われる可能性が高まっている。起死回生の一手があるとすれば、FIFAランキング2位で充実の戦いぶりを見せているフランスに快勝することだろうか。

文◎佐藤景


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