堂安律の左足が日本中を歓喜させた。日本にとって7度目となるカタール・ワールドカップ。ドイツとスペインから2度も奪った同点ゴールが、逆転勝利の礎になった。ベスト8を目前にして敗れた無力感を忘れずに、4年後にはエースでリーダーになることを誓う。

上写真=堂安律の2度にわたる咆哮が、日本のワールドカップの象徴になった(写真◎Getty Images)

■堂安律カタール・ワールドカップ出場記録
・11月23日 グループE第1戦/○2-1ドイツ=71分から出場 1ゴール
・11月27日 グループE第2戦/●0-1コスタリカ=先発、67分まで出場
・12月1日 グループE第3戦/○2-1スペイン=後半から出場 1ゴール
・12月5日 ラウンド16/▲1-1(PK1-3)クロアチア=先発、87分まで出場

「やってやったぞ!」という感覚があまりない

 堂安律にとって初めてのワールドカップは、一言で表現すれば「未熟さを知った大会」だという。「無力さと言ったほうが言葉的には近いかもしれない」とも。

 ドイツ戦もスペイン戦もこの男の左足から同点ゴールが生まれ、2度にわたって優勝経験国から逆転勝利をもぎ取るブースト役になったにもかかわらず、だ。

「近くに行けば行くほど遠く感じるのが正直なところ」

 世界との距離感を、こうも表現した。近づいたが、まだ遠い。蜃気楼のようなものだろうか。

「2大会連続、3大会連続でゴールを取っていれば圧倒的に自信に変わるんでしょうけど、自分自身もそれほど『やってやったぞ!』という感覚が、振り返ってもあまりないですね。負けて終わったから無力さが勝ってるのかもしれないですけど、あの舞台で決められない自分に対しての未熟さのほうが正直、勝ってます」

 先発出場を果たしたラウンド16のクロアチア戦。初めてのベスト8をかけた戦いにPK戦の末に敗退させられた。そこで大会3点目を決めることができなかった自分を悔やんだ。

 だからこそ思い描くことのできる、次の日本代表の姿がある。

「もちろんドイツ、スペインのときにやった戦い方は、すべて僕たち選手がやりたいことだったわけじゃない。ただ、勝つ可能性を上げるために取った手段なだけであって、もちろん見てる方もそうですけど、僕たちもそれが理想としているサッカーではないことはわかっています。コスタリカ戦、クロアチア戦のようにボールを少し持たせてくれる相手にも、やはり強豪国相手にも、ワールドカップで90分間、ボールを保持して勝ちたいという理想はあります」

 ただ、理想論にどっぷりつかっておぼれるほど、ナイーブではない。

「理想を求めて勝ちたい。いいメンバーもそろっているし、それができるポテンシャルもあると思う。ただ、ホテルで選手で話しましたけど、その例は出ました。南アフリカ大会が終わってからの4年間も本田(圭佑)さんたちが理想を求めて、でも(次のブラジル大会で)敗退したと、経験している選手が話してくれました。だからこそ、この大会で粘り強い守備が、理想にはほど遠いけれどできたということは、やはりベースとして持っていないといけない。それを持ちながら理想を求めたい。ベースを変えるのはダメなので。技術を含めて身体能力を上げていかないといけないし、戦術的な理解度も必要です」

 理想のためにゼロベースで仕切り直すのではなく、いま確かに手に入れたものを最大限に活用しながら、地に足をつけて組み立てていく青写真。4年後の実現に向けて、敗退のその瞬間から勝負は始まっている。

 そして何より、日本代表の価値にしびれるほどに気づいたことが、最大の収穫だっただろう。

「ワールドカップは本当に想像以上に自分を奮い立たせてくれたので、日本代表に対する思いはさらに強くなっています」

 初めての大会を経験して、一歩前に進んだ。

「エースになりたいと言っていますけど、リーダーにならなくちゃいけないかなと思っています」

 エースでリーダー。堂安の未来像がそこにある。


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