上写真=三笘薫がスペイン戦の主役になる(写真◎JMPA福地和男)
「勝つことで日本のサッカーのレベルが上がる」
「三笘薫待望論」が日に日に高まって、とどまるところを知らない。変幻自在のドリブルで、世界をぶち破るシーンを何度も見せてきたからだ。
初戦のドイツ戦では57分から投入されて、75分に左からカットインして堂安律の同点ゴールを導き出した。第2戦のコスタリカ戦では、62分にピッチに入ると、88分には左サイドからゴールラインまでドリブルで抜け出して、今度はゴールラインと平行にゴール方向へと突き進み、マイナスへのラストパスでビッグチャンスを導いてみせた。
だから、スペインが相手の第3戦でも「自分の特徴を出せればチャンスはあると思います」という確信がある。
その特徴を出すまでの過程が大事になる。チーム全体としては「ボールを握られる展開で自分たちがどう主導権を握っていくのか」「取りどころはどこなのか」がコミュニケーションの大きなテーマだという。ボールを保持するチームがゲームの主導権を手にする、というのが一般的なイメージ。だが、ボールがなくても主導権を維持したまま試合をマネジメントできるという発想だ。
局面でいえば、三笘がボールを持ったらドリブルできるスペースを与えるために、仲間は近づきすぎないことがポイントの一つとして挙げられる。ただそれも、三笘自身からすればタイミング次第になる。
「僕にボールが入ったあとは近づきすぎないというところはあるんですけど、入る前から少し遠い距離になることもあった。フォーメーションは3-4-3でしたけど、いわゆるインサイドハーフの位置に1人入ってくれることで相手を引きつけたり、そこを1回経由して僕が前向きでもらったりできる」
やみくもに距離を取ればいいというわけではなく、相手を見ながら近づき、離れ、の流れが必要だということ。三笘にボールが入ればその足元に注目が集まることになるが、「それ以前」の仕掛けにこそ、スペイン攻略のポイントがありそうだ。
「そういう周りのサポートがうまくいったときには、自分のいい形に持っていけています。でも、サポートがうまくいっていなくても、自分から仕掛けてチャンスを作らないといけないとは思ってます」
スペインといえば、2021年に行われた東京オリンピックの準決勝が記憶に新しい。延長後半に決められて0-1で敗れたあの試合、三笘はベンチ外だった。
「素晴らしい相手と真剣勝負ができることを楽しみにしつつ、ここで勝つことで日本のサッカーのレベルが上がると思います」
先発か、途中出場か。そこに森保一監督の思惑が透けて見えてくるだろうが、どちらにしても「三笘待望論」を上回るパフォーマンスを披露する準備は整っている。