日本代表は現地12月1日、ラウンド16進出をかけてスペインとグループステージ第3戦を戦う。現在グループステージEの順位は1位スペイン(勝ち点4)、2位日本(勝ち点3)、3位コスタリカ(勝ち点3)、4位ドイツ(勝ち点1)。ケガ人を抱えるが、日本は自力で16強に進めるか?

上写真=4-2-3-1、4-3-3の可能性もあるが、スペイン戦は3-4-2-1(守備時は5-4-1)を採用するではないか?

守備だけではなく攻撃も参考に

 日本が目指すべきは勝利のみ。勝てば突破、負ければ敗退とシチュエーションは分かりやすい。引き分けでもドイツ対コスタリカの結果次第で勝ち抜けの可能性があるものの、ドイツが負けるとは考えにくく、日本は勝利で勝ち点3を積み上げたいところだ。

 必勝を期す試合に日本はどんなメンバー、フォーメーションで臨むのか。ヒントは昨季のUEFAヨーロッパリーグの準々決勝。敵地でフランクフルトがバルセロナを破った試合にある。

 以前、森保一監督に囲み取材の中で直接、聞いたことがある。鎌田大地の活躍について。そしてフランクフルトのバルセロナに対する戦いぶりについて。

「バルセロナとスペインサッカーはイコールではありません。ただ同じ志向の部分がありますし、フランクフルトがバルセロナを研究して破っていて参考になった」

「良い守備から良い攻撃というのは、われわれのチームの戦い方の一つで、それを実践しようとする中でフランクフルトがバルサに、まさに4ー3ー3を3ー4ー3、5ー4ー1のような形でうまく受けながら戦っていた。でもダメージになるような崩され方はせず、そこからボールを奪って素早い攻撃でチャンスをつくっていく。相手が攻めあぐねている状況をみて、つなぐところはつなぎ、幅を持たせながら攻撃を仕掛ける。あの試合は参考になりました」

 W杯のドローが今年4月1日あり、スペインと同組に決まり、その直後にフランクフルトの試合があった。

「あまりしゃべるとあれですけど(笑)。バルサもスペインも、ビルドアップのクオリティが高いので、持ったときに守備のオーガナイズをしっかりしないと振り回されてしまう。そこをバランスよくすること、いいヒントになりました。ただ、守備だけの守備ではなく、攻撃につながっていくところが参考になりました」

 フランクフルトは森保監督が広島時代から採用する同じ3-4-2-1のフォーメーションで戦っていたが、その守備方法は大きく異なっていた。広島では攻撃から守備に切り替わった瞬間、ボールの周辺でファーストディフェンダーとなる選手と数人がプレスにいき、他の選手たちは帰陣することが基本だった。守備を素早くセットするためだ。だがフランクフルトは高い位置からはめにいく姿勢を保ちつつ、機に応じてシャドーをMFのラインに組み込み5-4-1にシフト。最終ラインが下がりすぎないことが重要で、コンパクトな守りでバルセロナのパスワークを封じた。

 そして印象的だったのは、奪ったあとのカウンターの精度だ。1トップ+2シャドー、両翼に加え、時に応じてボランチの1枚も前線へと走り込んだ。その迫力と鋭さでバルセロナを苦しめた。

 もちろん全く同じではないが、多くの部分で似ているバルセロナとスペイン代表。指揮官がヒントを得たとすれば、第3節のスペイン戦にフランクフルトモデルで臨む可能性もあるだろう。あの日のフランクフルトは日本代表のコンセプトである「良い守備から良い攻撃」を実践していた。

 以上の理由と、ここまでの2試合でいずれも途中から3-4-2-1システムに変更したことを踏まえ、スペイン戦ではスタートから採用すると予想した。5枚で守れば、相手が巧みに使うハーフスペースをあらかじめ埋めておくこともできる。

 GKは権田修一が務めるだろう。コスタリカ戦では悔しい失点を喫したが、勝負のかかる大舞台でGKを替えるとは考えにくい。

 DFは3バックで右から板倉滉、吉田麻也、冨安健洋。冨安は29日の練習でダッシュを繰り返しており、先発起用もあるのではないか。いけるところまでいって、途中から伊藤洋輝や谷口彰悟に代わるプランがあるかもしれない。

 右ウイングバックは伊東純也、左ウイングバックは長友佑都と予想した。右の伊東はカウンター時に必要な人材であり、長い距離を走り切る走力とスタミナが期待される。山根視来の可能性もあるものの、攻撃意識を保つためにここは伊東とした。

 左はバランスを考えて長友。粘り強い守備と豊富な経験がこの大舞台で生きてくるはずだ。展開次第で途中から三笘薫にスイッチし、優位に試合を運びたい。

 ボランチは守田英正と田中碧のコンビか。遠藤航はコスタリカ戦で痛めた右ひざの状態が万全ではなく、冒頭15分間が公開された前日練習には姿を現さなかった。先発する可能性は低いと思われる。東京五輪で延長の末、敗れたことを考えれば、遠藤&田中でスペインにリベンジする機会にもなっただけに悔やまれるが、ケガばかりは仕方がない。

 2シャドーは鎌田大地と久保建英だろう。中3日で3戦目を迎える鎌田の疲労を考慮するなら、代わって南野拓実を先発させる可能性も考えられる。ただ、バルセロナ撃破の立役者でもある鎌田は先発起用したいところだ。森保監督はフランクフルト戦の鎌田のプレーについて「ライン間に入って、相手が守りづらいポジションで起点になるプレーをしていた。バルサは嫌がっていた。そこから周りにパスを供給しゴール前に入っていく、彼の良さが出ていた」と語っていた。同様の役割を期待しているのではないか。

 1トップは前田大然。CBを監視しつつ、プレッシャーをかけて無理やりボールを吐き出させ、2列目以降で奪取するための仕事を託す。この役割を担うなら、前田以上の人材は今の日本にいない。

 前日会見で森保監督は「スペイン戦に向けてチームとしていい準備ができてきていると思います。選手たちにはプレッシャーがかかる試合だと思いますが、自分たちの力を信じて、自分の力を信じて、仲間を信じて、戦いに臨んでほしい」と話した。

 日本のカタールW杯は、まだ続くのか。それともここでエンディングを迎えるのか。日本時間12月2日、朝4時(1日28時)。運命のキックオフとなる。

取材◎佐藤景


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