J2リーグ第25節、F C町田ゼルビア対東京ヴェルディが9日、国立競技場で行われた。J2初の国立競技場開催ゲームは、ダービーマッチ『東京クラシック』であり、1位と2位の首位攻防戦でもあり、注目を集めたが、互いの特徴を出し合って2−2で決着した。

上写真=町田対東京Vは互いの意地とポリシーがぶつかり合う白熱のゲームになった(写真◎Getty Images)

■2023年7月9日 明治安田生命J2リーグ第25節(@国立/観衆38,402人)
町田 2−2 東京V
得点:(町)藤尾翔太、安井拓也
    (東)染野唯月2

得意の形を示した町田、2点を追いついた東京V

 国立競技場に3万8402人の観客を集めて、現時点でJ2の1位と2位の直接対決であり、首都東京を本拠とするチーム同士のダービーマッチ『東京クラシック』、町田ゼルビア対東京ヴェルディが行われた。国立競技場の独特の雰囲気のもと、白熱したゲームが繰り広げられた。

 先手をとったのは首位を独走する町田。「国立という舞台の雰囲気や相手の勢いに惑わされることなく、しっかりした入りを強調した」という黒田剛監督の言葉通り、激しく相手ボールに食らいつき、開始わずか2分でスコアを動かした。右サイドのルーズボールから平河悠が出したボールをエリキがヒールでつなぎ、安井拓也がダイレクトでディフェンスラインの裏へ落とすと、走り込んだエリキがシュート。東京VのGKマテウスが素早く反応して防ぐが、こぼれたところを藤尾翔太が蹴り込んだ。

 さらに町田はボールを支配されながらも、38分に相手のスローインの場面でコントロールが乱れたところを下田北斗が狙って奪取に成功。エリキが持ち込んで左へ送ると安井がダイレクトで決めた。2-0で終えた前半は町田の狙い通りで、ここまでのシーズンで結果を残してきた得意の展開となった。

 後半20分過ぎまでは5バックにして守りを固めたこともあり、いよいよ町田ペースと思われた。だが、ここから東京Vが反撃する。前半からボールを支配していたのは東京Vで、DAZNのスタッツでもボール支配率は70%を超えており、チャンスも作り出していた。

 66分に左サイドの攻撃的MFに新井悠太を投入すると、スピードを生かして立て続けに好機を生み出し、攻勢を強める。73分には大きくボールを動かして右サイドの宮原和也がフリーで受けると、余裕を持ってクロスを入れる。これに飛び込んだのが、昨季に続き鹿島アントラーズからレンタルで加わっていた染野唯月だった。高いジャンプからヘッドで叩いたボールがネットを揺すった。83分にも、左サイドで抜け出した新井のクロスに再び染野が頭で合わせて同点に追い付いた。

 その後、両チームに勝ち越しのチャンスがありながら生かせず、2-2のままタイムアップ。勝ちきれなかった両チームの監督はともに結果を悔やんだが、総合的には順当な結果であり、詰めかけた双方のサポーターにとって見応え十分の試合だった。

 とりわけ2点のビハインドを追い付いた東京Vのプレーには目を見張った。森田晃樹を中心にボールがよく動き、両サイドから右の甲田英將、左の北島祐二、代わった新井らが果敢に仕掛ける攻撃は変化に富み、迫力を感じさせた。ただし、甲田と2ゴールを挙げた染野はレンタル移籍での加入で、新井は東洋大学3年生で特別強化指定選手として、それぞれこの6月から7月にかけて加わったばかりの選手たち。すぐにチームに溶け込んで重要な役割を担いチームの力を高めていることはプラスだが、選択肢が限られる中での選手起用とも映り、層がまだまだ薄いことは否めない。今後しばらく続く消耗の激しい夏場をいかに乗り切り、安定したパフォーマンスを続けられるかどうかが、J1昇格へのカギになりそうだ。

 一方の町田は、この日は追い付かれて勝ち点3を逃したが、J2最少の17失点(東京Vも18で2位)が示すようにデイフェンスの堅さは際立つ。球際の厳しさ、ハードワークはもとより、シュートブロックへの徹底はすさまじいばかり。今後も大崩れする不安は見当たらず、2位東京Vとの勝ち点差は10あり、黒田監督が掲げてきた「J2で優勝してのJ1昇格」が現実味を増してきた。

取材◎国吉好弘


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