宮市亮が復帰後初めて先発でピッチを駆けた。8月19日の明治安田生命J1リーグ第24節、FC東京を迎えた横浜F・マリノスは土壇場で2-1で勝利を手にした。宮市は64分までプレー。復帰後、最長の時間を過ごした芝生の上で感じたのは、焦りと充実だった。

上写真=宮市亮は負傷から復帰後、最も長い時間をピッチで過ごした(写真◎J.LEAGUE)

■2023年8月19日 明治安田生命J1リーグ第24節(@日産ス/観衆33,701人)
横浜FM 2-1 FC東京
得点:(横)永戸勝也、渡辺皓太
   (F)ディエゴ・オリヴェイラ

「恥ずかしながら、スタミナ切れです」

「ただ、何より、 勝ち点3を取れたことが、もう何よりだと思います」

 言葉にたっぷりの実感を込めて、宮市亮は微笑みながら2-1の勝利を楽しんでいた。

 2022年7月27日のE-1選手権、韓国戦で右膝前十字靭帯断裂の重傷を負ったドリブラーが、復帰後初めて先発のピッチに立った。すでに5月には復帰していて、以来8試合は途中からピッチに飛び出して勝利を求めてきた。エウベルが先発し、宮市が途中から入るのが「勝利の方程式」だが、この日はエウベルが出場停止だったこともあって、キックオフから全開だった。

「恥ずかしながら、スタミナ切れです」

 64分に水沼宏太と代わって退いて、そう苦笑いしたが、充実感はにじみ出る。「もう何より…」の冒頭の言葉が、その証拠だ。一方で、満足もできていない。 

「この約10カ月でその差を埋めていくのは、やっぱり簡単なことではないというのを感じています」

 その差、とは、「先発」と「途中交代」の違いだ。自分の中で心理的な押し引きがあるのだという。

「途中で入るときとはまた感覚も違って、プロとしてパフォーマンスも求められますから、もう、焦るのか焦らないのか、みたいな、そこの駆け引きっていうんですかね、そのやり合いで頑張ってます」

 先発でも途中交代でも、結果が必要。ただ、まっさらなピッチに飛び出していくのと、試合の状況によって登場のタイミングが変わるのとでは、「頭の中」が変わってくる。

「まずはやっぱり、守備のところですよね。戦術的な役割があるので、そこは全うしようと。そしてやっぱり、ゴールに絡んでいくところですよね」

 それが、先発した場合の頭の中。

 その言葉通りに、実際にゴールに絡んでいる。12分、アンデルソン・ロペスが下がって中盤左で持ったときに、左の前線でスタートを切る。そこにDFの頭上を越すパスが落ちてきて、巧みにトラップして抜け出した。これは飛び出してきたGKにブロックされるものの、この流れから最後は永戸勝也が鮮やかなループシュートを決めて先制している。

「練習中からも、ターンしたときにあそこを見てるから走ってくれ、という話はロペスからされていたので、その通りに来たなという感じでした」

 してやったりだが、では、途中からピッチに入っていく場合の頭の中は?

「僕たちは『ゲームチェンジャー』って言ってるんですけど、今日も途中から出た選手は試合を変えることができましたし、それぞれの役割があって、みんなで本当に勝ち点3を目指していくのが素晴らしいところだと思うんです。僕自身も、与えられた役割で、どこから試合に出るにしろ、頑張っていきたいなと思います」

 試合は一度は追いつかれたものの、90+1分に渡辺皓太がミドルシュートを突き刺して、土壇場で勝利をつかんだ。そして、首位奪回。宮市の今季初先発ゲームは、最高の形で終わった。

「また一歩先に、というか、ちょっとステップを踏めたので、また積み重ねてきたいですね」

 残りは10試合。大切な一歩を刻んだその先に、リーグ連覇をしっかりと見据えている。


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