7月29日に開幕した令和5年度全国高等学校総合体育大会男子サッカー競技(通称インターハイ)。北海道旭川市を舞台に開催された夏の高校サッカー日本一を決める戦いを制したのは、明秀日立高校(茨城)だった。

上写真=初優勝を果たし、笑顔が弾ける明秀日立の選手たち。夏を制した!(写真◎川端暁彦)

■2023年8月4日 高校総体・男子決勝(@花咲陸上)
桐光学園 2−2(6PK7) 明秀日立
得点:(桐)宮下拓弥(32分)、松田悠世(51分)
   (明)柴田健成(11分、19分)

茨城県勢として1979年の水戸商以来の優勝

 8月4日に行われた決勝戦は、明秀日立高校(茨城)と優勝経験を持つ名門・桐光学園高校(神奈川)が対戦した。実はこの2チーム大会直前の7月17日に練習試合で対戦済み。「日立市内で一番立派なグラウンドまで来ていただいて胸を借りた」戦いは、3-1での明秀日立が勝利。強豪相手の勝ち星は、選手たちにちょっとした自信をもたらし、この日の決勝に向けてもポジティブな材料の一つとなっていた。

 そのファイナル、明秀日立はいつも通りに立ち上がりからフルスルットル。「ここまで来たら技術・戦術じゃない。どこまでタフにやれるか」と萬場努監督が語っていたように、厳しい球際の攻防が続く展開を乗り切ると、11分にスローインの流れから右サイドを粘り強く突破したDF長谷川幸蔵のクロスをFW柴田健成がスライデングシュートで押し込んで先制点を奪い取る。さらに、19分、今度はGK重松陽が縦に綺麗に通した1本の縦パスを起点とする攻めからボランチ2枚が絡み、最後は抜け出したFW熊﨑瑛太が倒されたこぼれ球を、再び柴田が決めて、早くも2点のリードを奪った。

 ただ、桐光もこのまま終わるようなチームではない。「常にポジティブな声を掛け合おうと話している」という主将のGK渡辺勇樹を中心に前向きな言葉で互いを奮い立たせると、前半終了間際の32分にセットプレーからFW宮下勇弥が1点差に迫るゴールを突き刺す。さらに後半に入った51分にはMF松田悠世が大会屈指のドリブラーらしい見事な突破からの左足シュートを突き刺し、試合を振り出しへと戻した。

 以降はやや桐光ペースの流れとなっていたが、明秀日立もスキを見ての反撃を継続。粘り合いとなった延長戦でもゴールの生まれなかった試合の決着は、PK戦へと委ねられた。

 そのPK戦では7人目までのキッカー全員が成功した明秀日立に対し、桐光の7番手を明秀日立GK渡辺が見事にストップ。初めての日本一、茨城県勢としても1979年の水戸商業高校以来となる栄冠を掴み取った。

「私は『全国制覇』という言葉は使いません。まだ全国を『制覇』するような力がないことを知っているからです。でもこの大会で『日本一』になるチャンスはあると思っていますし、それを狙える力はあると思っています」

 決勝を前に萬場監督がそう語ったように、謙虚に、ひたむきな姿勢を維持しつつ、タフに戦い抜いた茨城の新鋭が「夏の日本一」へと輝いた。

取材・文◎川端暁彦


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