上写真=12月27日、ジャマイカ戦の前日練習で軽快な動きを見せる前田
お客さんは楽しくないし、僕たちも勝てない
前日練習を終えて取材ゾーンに現れた前田大然は、取材陣の質問一つ一つに、丁寧に答えていった。印象深かったのは、コロンビア戦の反省に触れたときに発した言葉の強さだ。出場時間はわずか3分と短かったが、ベンチで戦況を見つめながら、チームに足りなかったものを率直に指摘した。
「やっぱり戦うというところを見せないといけなかった。今はポルトガルでやっているからよく分かるんですけど、今回の試合(=ジャマイカ戦)では、戦うという部分を見せないと、お客さんも楽しくないと思うし、僕たちも勝てないと思います。しっかり戦うという部分を見せたい。それは今日、ミーティングでちょっと言おうかなと、はい」
実際、コロンビア戦の日本は球際勝負にことごとく負けていた。戦うことの重要性を、ポルトガルで過ごす日々の中で、前田は強く感じたという。
「日本とはまったく違うというか。本当にあっちではステップアップのためというか、チームはどうでもよくて、自分が上に上にということしか考えていないから、その場その場でみんなが戦っているというのを感じます。正直な話、僕のチームは練習は戦うというより少し緩い感じもあるんですけど、試合になると、『あれ、前の練習、そんなんやったか?』と感じるくらい、目の色が変わる。そこは本当にすごいと思う。日本はどうしてもチームが一番になりますし、優勝とか目指しますけど、ポルトガルでも上のチームは優勝を狙っていますけど、下のチームとか中堅は優勝ではなくて、本当に自分が上に上に、というところがあるので。僕もどっちかと言うとガツガツいくし、戦うタイプの人間でもあるので、そういうところで今できているのはすごく自信になる」
激しい日常を体験するからこそ、チームメイトに言えることもある。前田自身もそんな立場を理解しているからだろうか、仲間に伝えることとして「戦うことの重要性」に触れたのだった。
「もちろん、(ポルトガルも)チームプレーはありますけど、個人でやってやろうという感じが強い。逆に僕はけっこう、その中でもチームプレーをしようとやっているので、すごい頭がいいみたいな感じになっている(笑)。監督もやっぱり、そういう選手だけでやったらチームはダメなので、そういうところで(自分は)信頼を得られているのかなと」
所属クラブではチーム事情に合わせてサイドや1トップなど複数の攻撃的ポジションをこなし、プレーの幅を広げている。登録メンバーが18人に限られる五輪本大会に向けて、万能性は大きなプラスに違いない。
自身の成長を実感しているか、と問うと「それを確かめる意味でジャマイカ戦が楽しみ」と即答。
前田が、コロンビア戦後に漂い始めた五輪代表の閉塞感を打ち破る存在になるかもしれない。
取材◎佐藤 景