昨年度は阻まれた準々決勝の壁を乗り越え、2年ぶりのベスト4進出を決めた矢板中央(栃木)。1年前は敗退の瞬間をベンチで迎えたDF長江は、今回は主将として雪辱を果たし、さらに大きな目標を達成すべく準決勝に臨む。

上写真=準々決勝で気迫をみなぎらせて相手の攻撃に立ちはだかった長江。2試合連続完封勝利の勢いに乗って、初の決勝進出を目指す(写真◎中島光明)

6試合連続失点から、2試合連続完封

 試合終了の瞬間、矢板中央の選手たちは次々とピッチに倒れ込んで喜びを爆発させた。1月5日、四日市中央工(三重)と対戦した準々決勝。風上に立った前半に2得点を奪うと、風下の後半は相手の反撃をしっかり封じ、2-0で勝って2年ぶりのベスト4進出を決めた。

 高橋健二監督は試合後、「よく全国大会で4勝した。驚いている」と語った。プリンスリーグ関東で優勝した昨年度のチームは優勝候補の一角に挙げられており、髙橋監督も「日本一を狙っていた」と振り返るが、準々決勝で青森山田(青森)に敗戦。メンバーが総入れ替えとなった今年度は対照的に、プリンスリーグ関東で最下位に終わり(同リーグから3チームがプレミアリーグに昇格したため、県リーグ降格は免れた)、「県予選もギリギリで勝ってきた」(高橋監督)状態だった。

 そんなチームを主将として引っ張るのが、CBの長江皓亮だ。準々決勝でも体を張り、声を出し続けて最終ラインをリードした。矢板中央は県予選の初戦から全国大会の2回戦まで、6試合連続で失点しており、長江は「自分はディフェンダーでキャプテンなので、失点の責任は大きかった」と語る。だが3回戦で鵬学園(石川)に2-0の完封勝利を収めると、この日の準々決勝でも完封勝利。「コーチングやチャレンジ&カバーを徹底できた。無失点で勝つことができてうれしい」と喜んだ。

 昨年度は登録メンバーに入っていたものの、出場機会なし。青森山田に敗れた準々決勝も控えで、先制しながらも逆転負けを喫した試合をベンチで見ていた。「去年の悔しかった思いを今日の試合にぶつけた」という準々決勝では、「自分が中心となって声を出さないと雰囲気も悪くなる」という考えをコーチングで実践し、ボールへの厳しいチャレンジと合わせて堅陣を築いた。

昨年度は準々決勝で青森山田に逆転負け。その青森山田が優勝したことで、さらに悔しさの募る敗退となった(写真◎小山真司)

 11日の準決勝では、準々決勝までの4試合で15得点という攻撃力を誇る静岡学園(静岡)と対戦する。2009年度、17年度に続く3回目のベスト4進出で、まずは初の決勝進出を目指す矢板中央にとっては、あらためて守備力が問われる一戦となるだろう。中央に立ちはだかる長江を軸に、取り戻した堅守を持続できたとき、初の決勝進出が見えてくる。

取材◎石倉利英 写真◎中島光明、小山真司

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