日本代表は20日、大阪・パナソニックスタジアム吹田でペルー代表と対戦し、4−1で勝利を飾った。左ウイングとして先発した三笘薫はフル出場を果たし、1ゴール1アシストを記録。大きな期待にしっかり応える活躍で、チームの快勝に大きく貢献した。

上写真=ペルー戦で1得点1アシストを記録した三笘薫(写真◎毛受亮介)

類稀なる発想力と実行力

 日本代表の6月シリーズ、エルサルバドルに6-0、ペルーに4-1と連勝した2試合でこれまでにも増して大きく成長した姿を見せたのが三笘薫だった。エルサルバドル戦は前半45分のみプレーで、先制点を生み出すFKを獲得し、久保建英の3点目をアシスト、堂安律の4点目はほとんど三笘のゴールだった。攻撃陣で唯一フル出場したペルー戦では2点目を決め、伊東純也の3点目をアシストした。

 数字に残るこれらの結果もさることながら、プレーする佇まいに主力、エースとしての風格が漂ってきている。ボールを持つ姿に余裕も感じられた。ペルー戦では相手監督が事前に三笘への警戒を口にしていたように開始から厳しく監視された。ボールが渡らないように注意され、そして日本が右サイドからチャンスを作り出せていたこともあってボールが来ない時間もあったが、悠然と構えていた。

 そんな中で21分には鎌田大地の好パスを受けて抜け出し、絶好のボールを送って決定機を演出。これは菅原由勢のシュートが相手DFに当たって外れてしまったが、直後の伊藤洋輝の先制ゴールを経て、27分には伊東と菅原の見事な連携から鎌田がつないだボールをフリーで受けると、ドリブルで持ち込んでシュート。相手DFに当てながらゴールを決めた。自信を持って放ったシュートは相手に当たってもボールの勢いが勝り、ゴールに入ることが多いがまさにそれだった。三笘の相手を圧倒する気迫が生んだ得点に映った。

 そこに、三笘が大きく成長したあとが見える。世界最高峰のプレミアリーグでチームの主力として1シーズンを過ごし、大きなインパクトを残した自信がプレーを支えている。3点目の伊東へのアシストにしても、前田大然がつぶれたこぼれを鎌田が素早くつなぎ、フリーで受けて、自らシュートする選択肢もありながら、寄せてくるDFの股が開くのを狙ってパスを通している。試合後には「最初は浮き球も考えましたけど、ちょっとクオリティー的に難しかったので、うまく股が開くかなというところで狙いどおりでした。そこを(伊東が)冷静に決めてくれたので良かったです」と瞬時のアイディアと冷静な判断があったことを明かした。

 三笘のプレーについては、ドリブルとそのスピードやテクニックが注目される。もちろんそれらも卓越しているが、プレーの発想、アイディアも素晴らしい。その最たるものが今季のFAカップで強豪リバプールを下した決勝ゴールだろう。ボックス内の狭い局面で浮き球をリフティングしてかわし、さらに空中にあるボールを右足アウトのボレーで決めた。その発想にリバプール守備陣も対応することができなかった。

 筆者が初めて三笘を見たのは、2016年の関東大学リーグ、筑波大対慶應大の試合だった。スタメンで登場した1年生が、2-2で迎えた後半途中に、左サイドを切り裂くと右足のアウトサイドキックでクロスを送り、中央に構えた中野誠也(現大宮アルディージャ)の決勝ゴールにつなげた。その発想と技術の高さに驚き、以来、注目してきた。当時はまだ自信にあふれた選手ではなく、川崎フロンターレとのプロ契約を断ったのも、まだ確信を持てなかったからだと聞いた。しかし、そのテクニックとスピード、豊かな発想は際立っており、調子が悪い時でも1試合に2度、3度は膝を打つようなプレーを見せた。当時からすでに違いを生み出すことのできる選手だった。

 2年生でユニバーシアード日本代表に入り、2017年、2019年と2度の優勝、川崎Fに戻ってプロとなって活躍し、負傷で内容は不本意ながら東京オリンピックにも出場。ベルギーリーグで研鑽を積み、昨年はカタール・ワールドカップでプレー。そしてプレミアリーグでの活躍と、一足飛びにではないが着実にステップアップしてきた。

 生来のアイディア、発想力に、テクニックも磨かれ、スピートと緩急の使い分けという持ち味がフィジカルの強さを身に着けたことで高まり、さらに自信という最後のピースも手にしたように見える。

 日本代表のエースとしての期待は、この6月シリーズを経ていっそう高まるばかりだ。

文◎国吉好弘


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