セリエAのラツィオに加入した日本代表のMF鎌田大地。ヨーロッパにおける成長物語がいよいよ新章に突入したと言えるだろう。ここでは、そんな鎌田の起源を振り返る。先ごろ発売となった『ブレない信念――12人が証言する サッカー日本代表 鎌田大地の成長物語』(森田将義・著/ベースボール・マガジン社・刊)からエピソードを抜粋。今回は東山高校3年生時のエピソードを紹介する(その3)。

上写真=ラツィオの一員になった鎌田大地。トレーニングで汗を流す(写真◎Getty Images)

「僕がやります」。キャプテンに立候補

 高校生活最後の年(2014年度)のチーム立ち上げに際し、鎌田大地は「僕がやります」と自分でキャプテンに立候補した。チームメイトの多くは、リーダーシップを持つ別の選手がキャプテンになるだろうと予想していた。大地の意外な行動には、東山高校の監督・福重良一も驚いた。福重は、キャプテンに必要な資質を選手たちに提示していた。

1.チームメイトに尊敬されること

2.選手としての経験が豊富であること

3.仲間との話し合いができること

4.監督の戦略やアドバイスを理解し、それをほかの選手に伝えられること

5.苦しいゲームでも自信を失わないこと

6.嫌なことでも率先して引き受けること

 ジュビロ磐田でもプレーした元ブラジル代表キャプテンのMFドゥンガが、キャプテンの資質について、何かのインタビューで話していた。それに影響された「6カ条」で、これらを備える選手が理想のキャプテンだと考えている。

 高校時代の大地は「1」と「2」についてはあてはまるものの、それ以外の点には「合格点」をつけられない選手だった。「3」に関しては、仲間と話すことはできても、『話し合い』はできなかった。「4」に関しては、東山のサッカースタイルすべてを受け入れているわけではなかった。

 決して、キャプテン向きではなかった。最終的に、大地がキャプテンになるのだが、それは「賭けでした」(福重)。

「これまで積み上げてきた東山の一生懸命さや真面目に努力する精神が、お前のせいで崩れるかもしれないぞ」

 福重は大地にそう話したが、大地の決心は変わらなかった。

「僕の理想を求めていけば、大地がプレーヤーとして変わるんじゃないかとも思いました。実際、『嫌なことでも率先して引き受けること』に関しては、ガラッと変わりました。

 でも、何よりもすごくうれしかったのは、あいつがキャプテンに名乗り出たことです。彼が成長するため、夢や目標を達成するためには必要なことかなと考えて、最後は了承しました」(福重)