上写真=韓国に大勝したブラジル代表は国内で「ベストな11人が決まった」と報道されるほど、圧倒的な戦いぶりを見せた(写真◎Getty Images)
韓国の守備ブロックを多彩に粉砕
過去にブラジル代表と4度の対戦経験を持つ長友佑都は、試合2日前の取材対応の中で「ブラジルは世界トップクラスのチームで間違いないと思うんですけど、最強ではないと思うんですよね。僕が今まで見てきた、やってきた、ブラジルの方が強いんじゃないかと個人的には思っていて…」と述べた。そう考える理由も明確にある。
「マルセロやダニ・アウベスなどがいた頃、もちろん(2013年の)コンフェデレーションズカップのときも強かった。ネイマールもいた時はちょっと太刀打ちできなかったなと。全てにおいてですね。フィジカルも、技術も、判断も次元が違った。僕らもサイドバックを外に出して守備でハメていこうとしていたけど、ダニ・アウベスやマルセロの個人技に自分たちのプレスが無にされるという状況を何度も経験しました」
確かに今のブラジル代表は「最強」ではない。コンディション不良によりネイマールやマルキーニョス、アリソンといった主軸の一部を欠いているうえ、両サイドバックの人材難に悩まされてもいる。
ネームバリューという点でも「このポジションはこの選手、あそこはあの選手…」と誰もが知るようなスーパースターの数はかつてほど多くない。来日メンバーの半数以上が代表通算10キャップに満たず、経験不足も否めない。
それでも彼らが強いという事実には変わりない。タレント力では過去のチームに見劣りしても、カルロ・アンチェロッティ監督が植えつけた規律や献身性が組織としての総合力を底上げしている。
10月10日に行われた国際親善試合では、韓国代表を5-0で粉砕した。エステヴァンとロドリゴが2得点ずつ挙げ、ヴィニシウス・ジュニオールも1得点1アシストと躍動。流れるような攻撃を披露し、国内は「ブラジルに美しいフットボールが戻った」という見解で一致しているらしい。
韓国も懸命に打開策を探ったが、終始圧倒されてしまった。序盤は前線から積極的にプレスをかけたものの、簡単に剥がされたうえ、徐々に押し込まれるように。ボールを奪っても今度はブラジルの激しいプレッシングに晒されてビルドアップがままならず、ロングボールを蹴って陣地を回復するのが精一杯といった状況で、ほぼ一方的に殴られ続けるような展開になった。
アンチェロッティ監督曰く基本システムは「4-4-2」だそうだが、韓国を苦しめた攻撃の本質は違うところにある。前線のアタッカーたちが頻繁にポジションを入れ替えながら、手を替え品を替え多彩なアイディアを披露すると、それが周囲の選手たちのプレーと共鳴して創造性あふれるコンビネーションとして成立するのである。韓国は5-4-1で自陣をガッチリ固めていたが、それでも簡単に守備ブロックをズタズタに引き裂かれた。