横浜F・マリノスのキャプテンにして、クラブ愛にあふれる情熱的なナンバー8。喜田拓也の存在はファン・サポーターの誇りだろう。明治安田生命J1リーグが再開する7月30日には、Jリーグ開幕時から続く唯一のカード、鹿島アントラーズ戦が待っている。『The Classic』と銘打った一戦は、首位と2位の直接対決。大一番を前に、喜田が思うこと。

上写真=喜田拓也は一番高いところを目指して、仲間とともに最高の日々を過ごす(写真◎J.LEAGUE)

欲張りになりながら

――横浜F・マリノスはJ1第22節を終えて、首位に立っています。キャプテンという立場から、チームの状況をどのように見ていますか。

喜田拓也 状態は間違いなくいいですし、取り組む姿勢が結果に反映していると思います。でも、目指しているのはもっと高いところにあるので、満足している人は誰もいません。まだまだこれからだなと。もちろん、力を示すことができれば望むものを手に入れられる自信はあるので、しっかりチーム全体で表現したいと思います。

――22試合を終えて勝ち点45。好調の要因はどこにあるでしょう。

喜田 まずはお互いを尊重しあうこと。そして、一人ひとりが、自分がチームを勝たせるためにいるんだということをきちんと理解しているところが大きな強みだと感じています。そういう姿勢を大事にしてきましたし、結果が出ているから、というよりは、結果があとからついてきたと思います。結果が出ていなくてもぶれない姿勢を持ち続けてきて、もちろんいいことばかりではないですけど、少しずつクラブの力、チームの力になってきていると思っています。

――ケヴィン・マスカット監督が昨年夏から指揮を執るようになって1年、さらなる進化をどこに感じますか。

喜田 ボス(アンジェ・ポステコグルー前監督)からケヴィンに代わったときも、攻守ともに考えは同じでした。収穫と修正は試合ごとに必ず出てきて、ていねいに一つずつつぶしてアップデートして、よりスキのないチームを目指しています。攻撃で言えば得点につながる崩し方、最後のクオリティー自体も上がってきています。守備ではライン設定もプレスのかけ方も練習からていねいにやっているので、グレードアップしたと思います。失点数を見ても成長が見えますし、アタッキング・フットボールと言われますけど守備にもこだわっていて、前からのプレスも最後の局面でやらせないことも、共通理解は深まってきています。

――その失点はわずか25。そして得点が48で、得失点差が実に23と、驚きの数字ですね。

喜田 クラブに根づいていることなのですが、僕たちは2-0でも3-0でも点を取りにいきますし、その姿勢が数字に表れていると思います。そういう姿勢を持ったチームは多くはないと思うので、チームカラーとして誇りですし、皆さんにも楽しんでいただけていると思っています。

――ほかに、支配率が58.2%、ゴール期待値は1.703、ゴール数は1試合平均2.14といずれも1位です。特に、平均2得点以上を挙げているのはF・マリノスだけ。攻撃的な姿勢はきちんと数字も示してくれていますね。

喜田 僕たちはボールを持つことにこだわっていますし、持っていればゲームをコントロールできる部分が多いですからね。それに、持っていないときには攻撃的な守備をするので、攻守両面で攻撃的なのが強みです。その一つの要素として数字で表現できていると思いますけど、もっと伸ばせる感覚があるんです。もっと支配できるし、ということは、チャンスを作る確率も上がっていきます。クオリティーや共通理解はさらに上げていきたいところです。

――25の失点の内訳を見ると、セットプレーからが9で36%と最も多いんです。セットプレーに不安があるという解釈もありますが、そうではなくて、流れの中からやられていないから相対的にセットプレーの失点の割合が多く見える、と分析することもできます。

喜田 セットプレーはトレーニングで攻守ともに非常にしっかりとやっていて、細部は詰められるところまで詰めたいと思っているんです。失点の数だけで物語ることはしないですけど、もっと少なくできる印象はあるので、みんな自覚しているところだと思います。でも、ナーバスになりすぎて自分たちのカラーを出さないということはないので、欲張りになりながら失点を減らす取り組みもやっていきますし、セットプレーを与えないプレーをすることも、崩されてからの失点も少なくできれば、スキをなくすことができます。