清水エスパルスのユニフォームに掲出されている『不思議なロゴ』には「熱い思い」が詰まっている。発案者である株式会社タイカの鈴木大登代表取締役社長と、清水エスパルスの山室晋也代表取締役社長の話を聞けば、その思いの強さが分かるだろう。話題の国名ロゴ、「Cambodia Kingdom of Wonder」を掲出した理由を探った。

上写真=鈴木大登社長(株式会社タイカ)と山室晋也社長(清水エスパルス)

「観光業再興の役に立ちたい」

 今季、プレーする清水エスパルスの選手たちの姿を見て、頭に「?」が浮かんだ方もいるかもしれない。ユニフォームのパンツ部分、左の太もものあたりに、見慣れないロゴが掲出されている。そこには「Cambodia Kingdom of Wonder」とある。平たく訳せば、不思議の王国・カンボジア。Jクラブのユニフォームに国名が入るのは極めて異例のことだ。

 カンボジアがスポンサーに? 清水エスパルスを国がサポートする? 通常のユニフォームの掲出ロゴを想像するなら、多くの人はそう理解するだろう。しかし今回は、清水エスパルス側からカンボジアへ向けたメッセージになっている。ベクトルが、違う。

 このロゴの掲出を発案したのは、株式会社タイカ(Taica)の鈴木大登代表取締役社長だ。鈴木社長が、その意図を説明する。

「きっかけは、昨年4月のカンボジア王国と日本との意見交換を拝見したことでした。コロナの影響でカンボジアの観光客が激減し、観光業に従事する多くの企業が窮地に陥っていて、また多くの失業者が出ていると耳にしました。弊社も新型コロナの影響を受けていますが、幸いなことに半導体関連の事業により、業績への影響を抑えられました。そこで微力ながら、カンボジアの観光業再興のお役に立ちたいと考えて、今回、ロゴの掲出を決めました」

 同社は2017年から清水エスパルスのオフィシャルパートナーを務めており、2021年シーズンからはオフィシャルトップパートナーとなった。タイカとエスパルスの強い絆が、今回のメッセージ掲出につながっている。

 清水エスパルスの山室晋也社長は「熱い思い」がこの取り組みの根底にあると強調した。

「タイカ様とは2017年よりオフィシャルパートナー契約を締結させていただいています。今年からは、さらに増額をいただき、オフィシャルトップパートナーとして、まさにトップクラスの協賛をいただきました。エスパルスを支えていただいております。
 今回、ユニフォームのパンツにカンボジア応援ロゴを掲出することになりました。カンボジア政府公認でのJリーグクラブへのロゴ掲出は初めての取り組みです。Jリーグがアジアサッカー発展のためにパートナーシップ契約を締結し、提携しているカンボジアにおいて、タイカ様は事業を展開し、同国の発展に多大なる寄与をされています。そのタイカ様のカンボジアに対する熱い思いで、今回の契約締結に至りました」

 タイカとエスパルス、そしてカンボジアの「思い」が一つの形となり、今回の応援ロゴは誕生した。