宮崎県総合運動公園陸上競技場でキャンプを行なった鹿島。最終日の1月20日は午前におよそ2時間のトレーニングを実施した。選手はボール回しやミニゲームなどメニューをこなし、練習を終えて鹿嶋へと戻った。

上写真=トレーニングを見つめるザーゴ監督(写真◎サッカーマガジン)※撮影は1月19日

28日のACLPOは「一つのミスも許されない」

 1月10日から始まった宮崎キャンプ(初日は移動のみ)は最終日を迎えた。初日から参加していた選手もいれば、途中から合流した選手も数多くいる。1月1日に昨季の最終戦(天皇杯決勝)を戦い、およそ4週間後の1月28日は、新シーズン最初の公式戦が待ち受ける異例のスケジュール。しかも、その試合に敗れれば、早くも一つのタイトルを失う。いわば重要な一戦だ。

「一番理想的なのは、1月28日の試合に、少しでも(チームが)でき上がった状態に持って行くこと。このACL(AFCチャンピオンズリーグ)の試合は一つのミスも許されない」

 ACL本戦出場を懸けたプレーオフ(対戦相手未定)について、そう語るのは今季から指揮を執るザーゴ監督だ。キャンプ最終日に報道陣の取材に応じ、チームの現状とACLプレーオフに向けた考えを明かした。

「キャンプの初期は15人前後しか(選手が)おらず、ましてや選手のポジションが重なってしまうところもあり、チームコンセプトをやろうとしても、なかなか浸透させるのは難しいところがあります。まず、選手のコンディションを戻さなければいけない。その作業から始まりました。全員ができるだけ同じフィジカルコンディションにしなければいけないので、それは早急にやらなければいけないこと。それと並行して、今後はさらにみんながそろうので(※AFC・U-23選手権に出場したFW上田綺世、DF町田浩樹、杉岡大暉は宮崎キャンプには参加していない)、コンディションの差はあるだろうけれど、チームとしてのコンセプトを少しずつやっていければと思っています。それから選手たちの状態を見極めて、28日(ACLプレーオフ)は戦わなければいけない。能力があっても、(コンディションが悪く)走れない選手は出場させられませんので」

 ただ、宮崎キャンプで多くの手応えを得たことも事実だ。指揮官は、初めて率いる『日本のチーム』としての鹿島の素晴らしさを、次のように言葉にする。

「たった1週間ほどしか(キャンプ期間が)なくても、練習試合(18日のテゲバジャーロ宮崎戦)で選手が見せたものには、日本人の“すごさ”が出ていたのではないかと思っています。戦術練習をそんなにやっていない中で、私が口頭だったり、映像を使ったりして要求したものを、表現しようとしました。その姿勢、あるいは場面によっては表現できたことは、非常に良い収穫となりました」

 中でも、テゲバジャーロ宮崎戦ではルーキーのMF荒木遼太郎と、ユース所属のMF柳町魁耀がゴールを決めた。若い世代の選手が「活躍できるのは非常に良いこと」と頬を緩めつつ、『育成』についても言及した。

「このクラブの伝統として、選手を育てる歴史がある。私も若手を起用すること、育てることに関して、クラブと考えが合致しています。クラブといろいろな話をする中で、できればユース所属の選手を週に数回、トップチームの練習に参加させたいと伝えました。もちろん、いろいろな問題はあるのでしょうが、それに支障がない程度で、ユース所属の選手も育てていきたい。そうした考えを持って取り組むことについても(クラブと意見が)合致しているので、うまく下部組織(アカデミー)とトップチームが融合できれば良いです」

 ザーゴ監督はトップチームのみならず、アカデミーの選手育成も念頭に置く。クラブの将来を見据えた考えを持っていること明白だ。監督としてのキャリアをブラジルから日本へと移した覚悟と責任は、次の言葉にも表れているだろう。

「今回、アントラーズは多くの選手が代わっただけでなく、指導スタッフも総入れ替えしました。そこには『新しいものを作り出す』という意味が込められています。それを全員でやっていければと思っています」

 新たな指揮官を迎えた“新生”鹿島は、覇権奪還に向けて着々と準備を進めている。

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