意識が変わればすべてが変わる
2020年シーズンにV字回復を狙うチームの先導者となる尹晶煥監督は、これまでサガン鳥栖とセレッソ大阪で実績を残してきた。鳥栖では就任初年度の2011年シーズンにJ1昇格を成し遂げ、翌12年はチームをJ1で5位に躍進させている。13年こそ12位と振るわなかったが、翌14年は方向性の違い(クラブ発表)を理由に退任した8月の時点でチームを首位に導いていた。
C大阪でも就任1年目の2017年にチームをJ1・3位に躍進させ、ルヴァンカップと天皇杯のカップの2冠を達成。クラブに初めてとなるタイトルをもたらしている(翌18年シーズン限りで退任。J1・7位)。
J1昇格も経験し、実績は申し分ない。11年もの長きにわたり、J2暮らしが続くクラブを変えるには、これ以上ない指導者と言えるかもしれない。当然ながら期待は高まるが、監督自身は今回のチャレンジが簡単ではないと断った上で、次のように決意を語った。
「たくさんの方がチームを応援し、期待してくれている。J1昇格という目標のために、今日、第一歩を踏み出しました。J1昇格というのは簡単なことではないですが、選手、コーチングスタッフ、フロント、サポーターの方たちの大きな応援、すべてが一つになることができれば、みんなで課題を克服し、壁を乗り越え、目標を達成する可能性が十分にあると思っています。私はたくさんの経験をしてきたので、しっかりそれを生かし、選手と意思の疎通をはかり、良い結果を出せるようにしていきます。そのために、着実に、しっかりと準備をしていきたい。皆さんにも期待をしていただきたいですし、多くの関心を持っていただきたい。
今回、色々な選手が入ってきましたが、既存の選手たちとしっかりと調和することができれば、より大きな力を発揮できると思っています。今年、その夢が叶うのか、叶わないのかは分かりませんが、私たちは最後まで最善を尽くす姿をお見せします」
目標は、J1昇格。そのために、どのようなチームを作っていくのかについて、尹監督はJリーグで結果を残してきた自身の経験を踏まえて次のように指針を示した。
「自分がお見せしようとしているのは、組織的に戦うチームです。守備的なチームにするという見方をされますが、私は攻撃をするのための守備ということころに重点を置いています。最大限、早く相手のゴールに迫る。そういったサッカーを目指しています。
それが可能なのか、可能でないのかはまだ分かりません。ただ、そういうふうにやろうと準備をしています。選手たちが私の考えを早く受け止めることができれば、自分たちが志向しているサッカーを早く実現できると思います。その反応が遅ければ、そういう姿をお見せするのも遅くなる。言葉で表現するのは難しいですが、ぜひグラウンドを見続けていただきたい。皆さんも私が今までやってきたことは分かっていると思うので、ぜひ、それを比較してもらいたいと思います。もちろん、過去に率いたチームとは選手が違うのですが、選手は違えど、やることは変わらないということです。質という部分ではどうなるかは分かりませんが、我々の選手たちなら、十分に可能だと考えています。最後まで粘り強く戦います」
ハードワーク、組織力、攻守の切り替えの早さ、シンプルな攻め、粘り強さ。指揮官が千葉で求めるものは、自身がこれまで率いてきたチームで求めてきたものと変わらない。そして、チームで戦うための前提となる「考え方や姿勢」の部分を求めることも、これまでと同じだった。
「私が鳥栖で現役だった時に、選手の態度に驚いたことがありました。夜遅くまで漫画を読んでいるとか、そういう生活のリズムを見て驚いたのです。そこにプロらしさを見ることができなかった。それはコーチになってから同じです。セレッソでも同じでした。
ジェフでも、まずは生活のリズムを変えたい。サッカー選手であれば、プロの選手であれば、自分の生活リズムを考えなければならない。それは1週間や2週間で変わるわけではないですが、やり続けることで意識は変わってきます。3部練習も実施することにしましたが、サッカーのことだけを考えるという目的を持って取り組みます。選手のプロ意識を変えることによって、生活リズムをしっかり作ることになる。私は、鳥栖でもセレッソでも選手の変わる姿を見てきました。
今、選手と話すと、夜遅くまでスマホのゲームをすると。今の世代を考えるとそれは仕方のないことでしょう。ですから、節制すること、生活リズムを変えることを教えないといけない。まず我々の目標が何なのかを毎日、話しています。選手たちの意識は必ず変わる。意識が変われば、すべてが変わると、私は思っています。これらは重点的に取り組んでいますし、これからもやっていくと思います」
会見当日に午前、午後の2部練習で始動したチームは翌日以降、朝6時から行なう3部練習を取り入れながら意識改革に着手する予定だ。13日からは沖縄でキャンプを張り、長いシーズンを戦い抜く下地作りにも励む。2010年から10年間、J2で戦ってきた千葉はハードなトレーニングと意識改革を断行する新指揮官の下で、悲願の昇格を目指す。2月23日に開幕する2020年シーズン。11度目の正直は、なるか――。
取材・構成◎サッカーマガジン編集部