オナイウ阿道は昨季、フランスのリーグドゥ(2部)のトゥールーズに移籍し、リーグ優勝とリーグアン(1部)復帰を成し遂げた。強豪ひしめくリーグで結果を残し、日本代表復帰も目指すストライカーに、新シーズンへの意気込みと代表への思いを聞いた。

サイドで点を取る意識が薄れた時期も…

10ゴールは最低限の数字。新シーズンは1部でさらなる飛躍を誓う(写真◎Getty Images)

ーーチーム事情という話がありましたが、CF以外もプレーできることで、ポジションが固定されなかった面もありますか。

オナイウ 色んな事情があったと思います。まだコロナも完全には終息していないですし、選手が不在になったり、そういう事情から、左右、真ん中と前線の複数のポジションでプレーしました。毎試合ポジションが変わることで、やりづらさがあったのは事実です。なかなか自分が点を取ることにフォーカスできなかったというか。もちろん出るからには役割を果たさなければいけないですが、そのために点を取る意識が薄れた部分も正直、ありました。自分が動いて味方にスペース空けることや、サイドでプレーしていて、味方の得点につなげるとか、そういうところも評価してもらっていましたが、周りを気にし過ぎて点を取ることにフォーカスできなくなっていた。監督とは色々な話をして、やっぱりチームが勝つことが一番だというのは僕自身も当然ありますし、役割をしっかりこなした上で自分が点を取れればとは思っていましたが、しっくりくる形でシーズンを終われたことは、新シーズンに向けて良かったと思います。

ーー自分の持ち味を再確認できたと。

オナイウ 僕はひとりでドリブルでグイグイいくタイプじゃない。ボックス内とか、裏に抜けてディフェンスラインにギャップを作り、そこに味方に入ってきてもらうとか。そして周囲と関係を築きながら一番前でプレーするのが一番、自分を生かせると思いました。チームメイトもその方が動きやすかったと思うし、実際、そういう話も周りの選手とはしていました。

ーー話を聞いていると監督やチームメイトとプレーについてかなり話していた様子が伝わってきます。それはトゥールーズならでは? フランスの特徴?

オナイウ 監督との会話については、日本とか海外とか関係なくその監督にもよると思います。たとえばボス(横浜FM時代のアンジェ・ポステコグルー監督)だったら、そこまで選手とコミュニケーションを取らないし、大分時代の片野坂(知宏)監督だったら、頻繁にコミュニケーションを取っていたので。印象を言うなら、海外の方がよりオープンかもしれません。日本だと監督と選手が話していると何かすごく重要なことを話しているように思われがちですけど、それだけじゃなくてフランクな会話もしますし、監督と選手と間の壁みたいなものはないと思います。その意味で自分の思っていることを伝えやすい部分があるのは確かです。信頼関係はもちろん重要で、その上で何か言ったところでマイナスの方向に行くこともあまりないと思う。自分自身でも、昨シーズンはそれができていたと感じています。

ーートゥールーズは昨季、見事にリーグドゥで優勝し、リーグアン昇格を果たしました。他のチームと何が違ったのでしょう。

オナイウ 他のチームは分からないですけど、選手一人ひとりの能力はやっぱり高かったと思います。試合に出続けないと感覚的に難しいというのがあると思うんですけど、練習でスタメン組じゃないチームの方が内容面で上回っているときもありました。その結果、試合に出場する時もあるし、競争力も、選手個々のモチベーションにしても、2部での戦いでしたけど、高いレベルにあったんじゃないかと思います。

ーー昇格が決まった瞬間の気持ちを改めて聞かせてください。

オナイウ ホッとした、ですかね。個人的にもチームとしてもそれが今年必要なことでした。新シーズン、リーグアンでやるために決断した移籍でもあったので。試合に出て、優勝して、昇格するということを目標にして臨んだシーズンで、それが達成できたことは素直によかったと思います。負けることはあまりなかったですけど、勝てないときもあって、チームとしてもうまくいかない時期がありましたけど、最後の10試合はいい形で勝ち点を積めたし、難しい試合を勝ち切れた。そこで自信を得られたと思っています。

ーー先ほどのポステコグルー監督の話が出ましたが、オナイウ選手と同じく昨夏、セルティックの監督になりました。一緒にプレーしていた前田大然選手も1月からセルティックでプレーしています。他の海外組も含めて、彼らの活躍は気になりますか。

オナイウ そんなに気になることはないですね。とくに連絡を取ったりすることも僕はあまりしない方だと思います。「また点を取っているな」とかぐらいで。自分は自分だし、リーグも違うので。

ーー植田直通選手とは同じリーグで対戦しました。

オナイウ ニームとはまず去年末に試合があって、今年はそれこそ、優勝が決まる相手でした。僕らにとっては大事なタイミングで戦うことになったチームです。個人的には結構、相性の良い相手だったなと。カップ戦でも2点を取れましたしね(笑)(※クープ・ドゥ・フランス2回戦)。