上写真=ルナール監督が電撃就任したチュニジア代表。どんな戦いを見せるのか?(写真◎Getty Images)
異例のタイミングで監督交代
初戦でオランダと引き分けた日本にとっては、決勝トーナメント進出のために是が非でも勝ち点3が欲しい一戦になる。だが、胸を張って勝利を確信するような準備ができたかというと、そうではないだろう。
なぜならグループステージ初戦と第2戦の間で、チュニジアの監督が代わったからだ。スウェーデンに大敗した直後(●1−5)、今年1月からチームを率いていたサブリ・ラムシとの契約解除(事実上の解任)が発表となり、後任にエルベ・ルナール新監督が就任した。
今年4月までサウジアラビア代表監督を務めていたフランス人指揮官は、自宅のあるセネガルからチュニジアのベースキャンプ地であるメキシコ・モンテレイへ急行。監督交代の背景にチュニジア共和国大統領府の介入が取り沙汰される中、「1秒もためらいはなかった」とW杯期間中という異例のタイミングでのオファーを即決で受諾した。
チームに合流したルナール監督は、就任会見よりも先に選手たちとミーティングを行い、その場でこう発言している。
「W杯のグループステージがどういうものか、君たちは知っているだろう。3試合ある大会では、まだ何も終わっていない。まだ、いろいろな可能性が残されている。サッカーでは、これまでにも突然、信じられないようなことが起きてきた。だが、黙っていたら勝手に何かが起きるわけではない。流れをひっくり返すという意志が必要だ。状況を変える意志、自分たちの精神状態を変える意志が必要なんだ。
そして、みんな、これは代表のユニフォームだ。ここまで来てくれた人たちがいることは、君たちもよく分かっているだろう。君たちを応援するために、はるばるここまで足を運んでくれた人たちがいる。彼らがここへ来るために、どれだけのお金を使ったか分かるか?
こういう話は、これまでにも聞いてきたと思う。ありふれた話に聞こえるかもしれない。何度も言われてきたことだろう。だが、これは真実なんだ。もし今日、このまま国へ帰ったら、何が起きるか分かるか? 今日チュニジアへ帰ったら、どうなるか。君たちも分かっているだろう? 分かっているよな?
国民はみんな怒っている。それは当然のことだ。彼らに『あなたたちは間違っている』とは言えない。彼らが怒るのは間違っていない。これは単なる感情の問題ではない。これはユニフォームなんだ。祖国なんだ。国家なんだ」
戦術よりもまずは意志。ルナール監督はナショナリズムやプロフェッショナリズムを呼び起こすようなスピーチで、選手たちの心に訴えかけた。日本戦に向けて準備できる時間がごく限られている中で、フランス女子代表やサウジアラビア代表で共に働いた信頼のおけるスタッフを緊急招集し、コンディション管理と日本戦のプランニングも急ピッチで進めてきた。
では、どんな戦い方で日本に挑んでくるだろうか。ルナール監督には成功体験がある。それは2025年3月の北中米W杯アジア最終予選、サウジアラビア代表監督として超守備的な5バックで日本に対峙し、試合を塩漬けにしてスコアレスドローに持ち込んだのである。
ただ、日本側も一部サウジアラビア代表の映像も使ってスカウティングを進めているという。もちろんチュニジア側もそうなることは想定しているだろう。そして、初戦を大差で落としているチュニジアにとっては何としても勝ち点3が欲しい試合になる。
そうなれば日本が「チュニジアは守備的に引いて守ってくるかも」と考えて準備している裏をかいて、序盤からアグレッシブに前へ出て奇襲をかけてきてもおかしくはない。チュニジア現地の報道を見ると、システムを4バックに戻すのではないかという論調もある。もともとチュニジアはW杯前まで4-2-3-1をベースとするチームだったが、スウェーデン戦では5-3-2を採用していた。そこでルナール監督は選手たちが慣れ親しんでいるシステムに戻すのではないかという主張だ。
5バックで守りを固めて失点を最小限に抑え、カウンターでひと刺しを狙うのか。4バックに戻してシステムのミスマッチを突きながら積極的に前へ出てくるのか。とにかく新体制初戦のチュニジアは何をしてくるか、どんな形で挑んでくるかわからず、謎が多く不気味なチームだ。