今回のチームの注目選手は?
昨年11月のアウェー戦では、日本が4−0でインドネシアに勝利を収めた(写真◎Getty Images)
クライファート監督が指揮するインドネシア代表の中で注目すべき選手は誰だろうか。「攻撃面では非常にいいものを見せられている」と考えるウォルシュが「最近すごく調子がいいので、ぜひ見てほしい」と挙げたのは、ともにイングランド2部のオックスフォード・ユナイテッドに所属するオーレ・ロメニーとマルセリーノ・フェルディナンの2人だ。
母方の祖母がインドネシア・スマトラ島生まれで今年2月にインドネシア国籍を取得したロメニーは、クライファート体制の初陣となった3月シリーズでインドネシア代表に初選出された。そしてデビュー戦から今月5日の中国代表戦まで3試合全てでゴールネットを揺らしている。
今年1月に加入したオックスフォード・ユナイテッドではリーグ戦11試合出場1得点と目立った成績は残せなかったものの、中国戦でのプレーから好調ぶりがうかがえた。長身ながら足もとが柔らかく、巧みなポストプレーで前線の起点になれるのが最大の特徴だ。機動力もあり、サイドに流れてのプレーもそつなくこなす。帰化選手が増えたインドネシア代表で唯一信頼できる人材が欠けていたストライカーのポジションで、ロメニーは早くも一番手の座を射止めつつある。
一方、マルセリーノは数少なくなった国内出身選手の希望として大きな期待を寄せられている。若くして将来を嘱望され、18歳でベルギー2部(当時)のデインズに加入して欧州に上陸。オックスフォード・ユナイテッド加入1年目の2024-25シーズンはリーグ戦わずか1試合出場と苦しんだものの、インドネシア代表ではすでに30キャップを超えて確固たる信頼をつかんでいる。まだ20歳と若く、順調に成長していけば今後長きにわたって母国をけん引していくことになるだろう。中国戦は累積警告により出場停止だったが、日本代表戦で復帰すれば伸びやかでアイディアにあふれるプレーを見られるはずだ。
東南アジアの枠に収まらないポテンシャルを秘め、来年の北中米W杯への切符をつかみ取ろうと邁進するインドネシア代表の成長スピードは凄まじい。昨年11月の対戦では日本代表が4-0で快勝したが、半年後の今回も同じような展開になるとは考えにくい。4次予選進出を果たしたことで自信をつけ、プレッシャーから解放されていれば、かつてなく手強い相手としてサムライブルーに立ちはだかってくるのではないだろうか。
インドネシア代表が世界の舞台に立つという目標を達成するにあたって、日本代表戦は重要な試金石だ。マリノスに残って調整を続けるウォルシュは、代表メンバーから外れていながらもチームとしての考えを代弁し、「今後どうなるかは自分たちしだいです」と力説した。
「11月の最終ラウンド(5次予選)も考えて準備していくにあたり、まずは今回の日本戦を貴重な経験にしなければならないと思っています。そのうえで9月、10月は歴史を作るための準備をする期間です。特に10月の4次予選は実力が非常に拮抗したチーム同士がぶつかる大会になるので、そこで戦うためのクオリティを日本との試合で得て、次につなげていきたいと思っているところです。
W杯出場は個人的な目標ですし、チームの目標であるのはもちろん、インドネシアという国全体の夢でもあります。だからこそ、まずは『絶対にW杯に出るんだ』という強い意志を発信し、その野望を実現するために努力し続けなければならないと思っています」
インドネシア代表は4次予選までに残されたわずかな試合を成長のチャンスと捉え、必死で日本代表を倒そうとしてくるに違いない。クライファート監督が森保ジャパンを打ち破るためにどのようなゲームプランを用意してくるかにも注目だ。
取材・文◎舩木渉