日本代表は29日、FIFAワールドカップ・アジア最終予選の第10節(最終節)、ベトナム戦に臨んだ。前節で2位以内を確定し、7大会連続7回目となるW杯出場を決めた日本は、吉田麻也と山根視来を残し、前節から先発9人を変更。しかし相手に先行を許す苦しい展開となり、後半は主力組を投入して猛攻を仕掛けたものの、反撃は吉田麻也のゴールのみで試合は1-1のドローに終わった。

上写真=同点ゴールを決めた吉田麻也(写真◎Getty Images)

■2022年3月29日 FIFAワールドカップ・アジア最終予選・B組第10節(@埼玉スタジアム/観衆44,600人)
日本 1-1 ベトナム
得点:(日)吉田麻也
   (ベ)グエン・タイン・ビン

日本対ベトナム 先発布陣

機能不全を後半の陣形変更と選手交代で改善

 顔ぶれが変わり、日本は機能不全に陥ってしまった。前節のオーストラリア戦から先発が9人替わったことで連係がままならず、ビルドアップの局面で詰まるシーンが散見。吉田、谷口の2CBはボールの出しどころがなく、チームとして三笘と久保の突破に頼る場面も目立った。

 相手のベトナムは3-4-2-1をベースに守備の局面では5-4-1となり日本のサイドアタックを封じてきた。それでも何回かは三笘、久保が好機を生み出してみせたが、ゴールネットを揺らすには至らず。攻めが形にならない時間が続くと、流れも悪くなっていく。19分には左CKからグエン・タイン・ビンにヘディングシュートを決められて、ホームで日本が先制を許してしまった。

 結局前半は0-1で終了。日本はボールを持つものの、なかなか決定的な形を作れず、ビハインドを背負ったまま後半を迎えることになった。日本は流れを変えるべく4-3-3を諦め、4-2-3-1にフォーメーションを変更。旗手に代わって伊東が入り、ドイスボランチは柴崎と原口、2列目は右から伊東、久保、三笘、そして1トップを上田が務める形にチェンジした。

 すると、ピッチに推進力が生まれ、鋭い攻めを見せ始める。そして53分に同点に追いついた。吉田がするすると持ち上がり、左に流れた久保に展開。久保が中央に折り返すと、原口がシュート。これはGKに弾かれるが、そのこぼれ球に吉田が詰めていた。

 同点に追いついた日本は、選手を交代させてさらにチームの活性化をはかる。柴崎に代えて田中、原口に代えて守田、久保に代えて南野を投入。陣形は変えずに4-2-3-1のままプレーすると、最終ラインからのパスの出しどころが確保され、ボールが回り始める。中山も内側にポジションを取るなど、間で受ける選手が増えて中盤で相手に後手を踏ませるケースが増えていった。

 70分には、中山、三笘、田中、上田とつないで、上田がシュート。南野に当たってこぼれたところを田中が蹴り込み、ゴールを破った。VARの結果、南野がハンドの判定でノーゴールとなったが、流れるようなパス回しからシュートに至った日本らしいプレーだった。

 77分には左CKの流れから守田が右でボールを拾ってクロスを上げる。谷口が頭で折り返すと、GKに触られたが、吉田が素早く反応。シュートはわずかに枠を逸れたが、日本の連続攻撃に相手は防戦一方となった。

 その後も日本は相手を押し込み、ゴリゴリとゴールに迫っていった。前半とは打って変わってスムーズな連係を実現。88分には上田のシュートがネットを揺らしたが、オフサイドを判定された。ボールの循環と攻撃の活性化には成功したものの、次の1点は遠く、結局試合は1-1で終了することになった。日本は勝利で最終節を飾ることはできなかった。

 予選で途中出場が多かった原口や柴崎、久保、そして代表デビューとなった旗手は先発機会を得て自らの力をアピールしたかったはずだ。しかし残念ながらこの日の試合でそれは叶わなかった。後半から出場した守田や田中の安定感、伊東の突破力が光る結果となり、とくに前半は『発見』に乏しい内容となった。

 多くの選手が語る通り、本大会のメンバー入りはこれからますますし烈になっていく。代表活動は6月シリーズ、7月のE-1選手権、9月シリーズがあるのみ。層の拡充と新たな選手の台頭は、本大会で結果を残すためにも欠かせないものだろう。カタールW杯まで8カ月の間に、日本は「ベスト8以上」の結果をつかむ戦力を整えることができるか。主力の充実を感じる一方、控え組の向上と順応の必要性も感じる90分になった。