2011年女子ワールドカップでなでしこジャパンが世界の頂点に立ってから10年余り。だがそこを頂点に世界の中で日本のランキングも下がり、新生なでしこジャパンは苦しい立場に立たされている。再び世界の頂点を目指すための登竜門となるアジアカップを目前に、宮間あやと丸山桂里奈の2人が、自身の経験を語り、なでしこジャパンへエールを送る。

昔も今も変わらない「強い代表あっての女子サッカー」

2011年女子ワールドカップで優勝を果たした

――かつては中国がアジアのトップに君臨し、日本は挑戦者という立場でしたが、2011年ワールドカップでの優勝以降は「アジアでは勝って当たり前」という時代になりました。その変化に伴い、アジアの戦いに臨む気持ちも変わりましたか。

宮間 チャレンジャーのときよりも、プレッシャーは大きくなりました。アジアのほかの国は日本を倒せば、「世界一に勝った」と言えますから。特にワールドカップのあとのオリンピック・アジア予選はすごい緊張感でしたね。

丸山 あのときは試合に勝ったあと、みんなホッとしてたよね。

宮間 そうだね。喜びよりも安心という感じだった。

――近年のなでしこジャパンはなかなか結果を残せず、注目が集まりにくくなっています。お二人はなでしこジャパンがどういう存在であってほしいと期待していますか。

丸山 やっぱり、なでしこが強くないとWEリーグも注目されないじゃないですか。だから、そこはすごく大事なところだと思います。ただ、それは昔から変わらないことですし、いま以上に「私たちが強くないといけない」という気持ちがありました。私たちが負けたらリーグに人が来ないんじゃないかってみんな思っていたよね。

宮間 その責任感はあった気がするね。やっぱり、なでしこの影響力は大きくて(2011年の)ワールドカップ後は、桂里奈ちゃん見たさに何百人もの人が来ていましたから。

丸山 岡山湯郷Belleもすごかったじゃん。岡山の町ごと全員来てたでしょ。

宮間 さすがに全員は来てないって(笑)

丸山 いや、ごっそり来てたよ(笑)。でも、あのときは本当にすごかったね。

――WEリーグもあの頃のように盛り上がってほしいと。

宮間 そうですね。絶対に途中でなくなるようなリーグにはなってほしくないし、成功してほしいです。

丸山 あやも私もアメリカでプレーしたことがあるんですけど、アメリカのリーグ(ナショナル・ウィメンズ・サッカーリーグ)はスタンドが満員になるし、週末になったら町全体が盛り上がるんです。それを知っているから、日本のWEリーグもあれくらい盛り上がってほしいし、そういうリーグを目指してほしい。アメリカは代表も強いから、女子サッカーが面白いというのが分かっているんでしょうね。

宮間 あと、ナショナルリーグなので試合前にアメリカ国歌が流れるんですよ。それは結構、選手にとっては特別なもので、日本でも国歌を流したら違うのにな、と思いますけどね。

――昨年開幕したWEリーグの今後を占う意味でも、今回のアジアカップは大きな意味を持ちますね。

丸山 そういう責任感があって怖さもあるでしょうけど、チームメイトがいるし、みんな同じ気持ちなので。とにかくピッチに立ったらみんなを信じてやるだけですね。

宮間 なでしこジャパンは国を代表するチームなので、誇れるチームであってほしいし、そして、それをつくるのは選ばれている選手たちだと思うので。チームとして納得できる結果を残せるように頑張ってほしいと思います。

取材・構成◎多賀祐輔 写真◎高野 徹

Profile◎まるやま・かりな/1983年3月26日生まれ、東京都出身。勝負強さを備えるFWでTEPCOマリーゼ、ジェフ千葉レディース、スペランツァFC大阪高槻で活躍した。2010年にはアメリカのフィラデルフィア・インデペンデンスでもプレー。早くから代表に名を連ね、2011年の女子W杯ではスーパーサブとして勝利に貢献。準々決勝のドイツ戦の延長に決めたゴールは語り草。2016年限りで現役を引退し、現在はその明るいキャラクターで親しまれ、タレントとして活躍している。

Profile◎みやま・あや/1985年1月28日生まれ、千葉県出身。幕張総合高等学校出身。現役時代はベレーザや岡山湯郷Belleでプレーし、アメリカのロサンゼルス・ソル、セントルイス・アスレティカ、アトランタヒートでも活躍。なでしこジャパンでも中心となり、優れたテクニックと戦術眼で何度もチームを勝利に導いたMF。2011年の女子W杯優勝の立役者の一人で、アジア年間最優秀選手も3度受賞。日本女子サッカー界の大きな足跡を残した。