明治安田生命J2リーグを終えて初めて開催されたのが「J2リーグアウォーズ」。見事に最優秀選手賞に輝いたのは、横浜FCのFW小川航基だった。サッカーマガジンWEBも参加する「DAZN Jリーグ推進委員会」で、得点王とベストイレブンと合わせて個人3冠に輝いたエースにインタビュー。大きな自信がにじみ出る言葉を聞いてみよう。

「お気に入り」のゴール

ホームの仙台戦で決めた左足の一発は「サッカーの本質」を突いたお気に入り(写真◎J.LEAGUE)

――26のうちのベストゴール、というよりはむしろ、「お気に入り」のゴールを聞きたいんです。そこに小川選手自身の思いが詰まっていると思うので。

小川 聞かれ方によって答えも変わってくるんですけど、お気に入り、ですか。なるほど。それならやっぱり、ホームのベガルタ仙台戦(第10節○2-1)で決めたゴールですね。(中村)拓海からのロングパスを左足で決めました。

――お気に入りのポイントはどこでしょう。

小川 最終ラインから一本でゴールまでつなげられましたけど、あれができたら苦労しない、というか、あれこそサッカーの本質だという意味で、ですね。何もない状態から、相手から見ればピンチでもなんでもないのに、一気にパスを通されてゴールを決められたわけですから、相当メンタルにきていたと思います。僕もそんなに大きなプルアウェーをしていたわけではなかったけれど、それを見逃さなかった拓海のピンポイントの、バックスピンをかけたボールと、落ち際をしっかりと待って左足の面でたたくことができた僕のシュート技術が詰まった、本当にいいゴールだったと思います。

――中村選手との息がぴたりと合いました。

小川 常日頃から自分の動きを最初に見てほしいと言ってきました。彼がどんどん怖いところにボールを送り込める素晴らしい選手だということは、キャンプのときからわかっていました。だから口酸っぱく、オレの動きを見ろと言ってきたことが、形になってうれしかったです。

 彼は常に顔が上がっているので、目が合うんですよ。得点にならなくても、チャンスになったりその起点になったりする拓海から僕へのパスは、ほかにもたくさんありました。相手もそれを警戒していたでしょうけど、後ろの選手にもいいパスを出せる選手がたくさんいたことも、今年の横浜FCの強みだったと思います。

――そんなホットラインはほかにもあって、サイドからのクロスに対して斜めに入って主にヘッドでたたき込むゴールが多かった印象です。少なくとも6つあって、特に長谷川竜也選手からのボールに合わせたゴールはどれも鮮やかでした。

小川 あの形は得点源になっていたし、竜也くんのカットインからのパスというのが今年のチームの強みでした。これもキャンプのときから、竜也くんのクロスが武器になるのはすぐにわかりました。普通の選手だったら、ストーン(手前に構えるDF)に跳ね返されたり逆に奥に蹴りすぎてホームランになっちゃうんですけど、竜也くんのクロスは、僕が決められなかっただけで、ほとんどすべて、僕が触れるところに届けてくれていました。

――ここまで話の中で共通しているのが、味方の選手の特徴を「見る」ことだと感じます。見極める観察眼の高さがゴールに結びつきましたね。

小川 シュンさん(中村俊輔)がジュビロ時代に話していたことなんですけど、選手の特徴を理解することの重要性について触れていたんですね。この選手はこういう動きが得意で、この選手はこういうところまでパスが出せて、また別の選手はここまで足が伸びて、ここまで頑張ることができて、という仲間のプレーを理解する大切さを、近くにいて肌身に感じてきました。

――影響は大きかったんですね。

小川 それはフォワードにも直結することだな、と。この選手がここで踏ん張ることができるなら、自分が先に相手の前を取っておけば点が取れる、とか、この選手はこの体勢からでもファーに上げる能力がある、とか、この選手は顔が上がったらキラーパスが出てくる、とか。今年のチームは監督も選手も多く代わる中でのスタートだったので、いち早く仲間の特徴を理解することが大事になると思っていました。それが染みついていたのかな。