興梠慎三研究
ニッパツ三ツ沢球技場は桐光学園時代からの「ホーム」（写真◎J.LEAGUE）
――6月の3つのゴールを振り返っていただきましたが、共通しているのは、センターバックの間を走り抜けて点で合わせて決めていることです。ストライカーの本能ですね。
小川 そこが僕のストロングですからね。昔から興梠慎三さん（現北海道コンサドーレ札幌）がどうやってゴールを決めているのかを見ていて、視野から外れて入っていくな、と。あそこまでうまい選手はなかなかいないですから、よく映像を見て研究していました。それを試合で実践できるようになったのは、僕自身も成長できている部分だと思っています。
――ボールに近い方のセンターバックの選手の背中を取る駆け引き、飛び出すタイミング、捕まらない距離感と、本当に3ゴールとも絶妙でした。
小川 中央で自分一人しかいないときだとクロスが出てこないことも多いですけど、例えば新潟戦は自分しかいなかったけれど、目の前の一人さえはがしてしまえば点は生まれます。竜也くんはそのことをわかっているので、信頼してくれてボールをくれます。相手がどれだけいようとも、一人さえはがせばゴールになることを再確認できました。
――そんなクロスを送ってくれる選手とのすり合わせも、細やかですね。
小川 大事にしているのはクロサーとのコミュニケーションです。相手のセンターバックがどういうタイプなのか、どこにスペースがあるのか、それをしっかり見て、このセンターバックは構えるからニアに動くので、そこに前で触れるようなボール出してほしい、というようにたくさん話していったので、クロサーと息の合ったゴールが多かったですね。それに、竜也くんやゼインは僕のことを見てくれていますし、言葉をかわさなくてもあうんの呼吸がありますから。
――前半戦を戦って、だいぶコンビネーションも熟成されてきましたね。
小川 チームのみんながどんなサッカーを展開したいのか、何を求めているのかは半年たってわかってきました。もっと良くなると思っていますよ。竜也くんやゼインが持ったら僕が動くということを、どのチームもスカウティングしていると思うけれど、それでも取れているのは2人がいいボールを送ってくれるからです。2人からのクロスで得点をもっと増やしたいですね。
――好調の理由の一つには、レベルの高いボランチの選手たちの存在もあるのではないかと思います。
小川 ボランチのところは開幕からいろいろな選手が出ています。特徴を持った、色のある選手がたくさんいて、どのボランチの選手が出ても相手にとっては脅威になると思います。ボランチは競争が激しいですが、チャンスを得たときに力を発揮してくれていることがチームの総合力アップにもつながります。どのボランチの選手が出ても良い連係が取れますし、信頼しています。みんなチームに欠かせないボランチです。
――J2も後半戦に入り、J1昇格への争いもさらに激しくなっていきます。
小川 まだ後半戦も始まったばかりですから、ここからですね。安心はできないですし、横浜FCを食ってやろうというチームばかりです。しっかりと勝てるように、慢心することなく、いままでのことは忘れて1試合1試合を大事にしていけば、勝ち点もゴールも取れると思います。一喜一憂せず頑張りたいですね。
――ホームのニッパツ三ツ沢球技場では、まだ8試合も残っています。専用スタジアムでサポーターとの親密な雰囲気、本当に素晴らしいですね。
小川 僕は生まれてからずっと横浜育ちですし、昔からプロの試合を見るなら三ツ沢か日産スタジアム、桐光学園高校のときもよく三ツ沢を使っていて、ホーム感があふれるというか、ここで活躍できるというイメージがあります。そういうことって大事だと思っていますし、僕にとってはさらに特別にホーム感のあるスタジアムですからね。専用スタジアムでのプレーは、スタンドとの距離が近くてモチベーションになります。
――第26節を終えたところで16ゴールで得点ランクトップです。こちらの争いも楽しみです。
小川 意識はしています。ただ、得点王を狙うというよりは、チームがいいときに僕に点が生まれているので、チームのパフォーマンスを一番に考えた上で、なおかつゴールが生まれるというのが一番の貢献になると思っています。それで最終的に「ああ、得点王になってたね」というのが一番きれいだと思うので、チームのことを第一に考えながら戦っていきたいと思います。
（文中の記録などはJ2第26節現在のものです）
取材・構成◎平澤大輔
Profile◎おがわ・こうき／1997年8月8日生まれ、神奈川県横浜市出身。桐光学園時代から有名なストライカーで、年代別代表でも活躍。2016年にプロキャリアをジュビロ磐田で始め、19年にはJ2の水戸ホーリーホックに育成型期限付き移籍して、7ゴールと結果を残したた。20年に磐田に戻ったあと、今季、横浜FCに完全移籍で加入した。ゴールを量産すると、2・3月に続いてこの6月もJ2『明治安田生命Jリーグ KONAMI月間MVP』に選ばれている。186cm、78㎏