上写真=これが決勝点のカウンターのシーン。増山がドリブルで突き進んだ(写真◎J.LEAGUE)
■2020年10月14日 J2リーグ第26節(@デンカS:観衆5,774人)
新潟 1-2 福岡
得点:(新)本間至恩
(福)グローリ、福満隆貴
「引き分けは負けに等しいと思っていました」
その瞬間、増山朝陽は「ここで出さなきゃ」と思った。
1-1に追いつかれたわずか7分後の71分、アルビレックス新潟のCKをGK村上昌謙がパンチングで弾き、跳ね上がったボールに遠野大弥が競って、増山の目の前にこぼれてきた。
「展開的に押し込まれて守備に追われていて、体力的にもあと何回スプリントできるかという状態でした。失点のあと雰囲気が悪くなったのは事実で、声を掛け合って良くしていこうと思っていました」
「どこかで100パーセントで力を出したいと考えていて、大弥が相手と競り合うときに勝ってくれると思って、そこで出さなきゃと。それがあのシーンになりました」
増山はこぼれたボールをヘッドでつついて前に出すと、そのまま一気にゴールに向かってまっすぐドリブルで突き進んだ。目の前を左から右前に遠野が走り込む。そこに出す選択肢もあったが、中央に福満隆貴と松本泰志も走り込んできていた。状況を冷静に見極めて遠野をダミーに使って中へ送り込むと、福満がGKの出際を突いて流し込んだ。2-1。
「攻撃はそれぞれが孤立しないようになってきました。あのカウンターのときもそうですけど、たくさんの人が絡んでいて、僕を入れて4人いました。その前も、ゴール前で連係したり近いポジションに人がいるのでやりやすかった」
あの一瞬に4人が同時に駆け出していったことが、福岡の強さを象徴しているだろう。「連勝が止まるのはダメで、引き分けは負けに等しいと思っていました。だから、是が非でも1点取りたかったんです」という共通認識の下、必殺技のカウンターにかけた。決めた福満も「ここでしかゴールにつなげられない」と感じていた。これこそまさに一体感だ。
この試合は序盤から好リズムだったが、攻守において右の増山、左の福満とサイドハーフの貢献が大きかった。1点目のCKも福満の折り返しから放った増山のシュートがGKに弾かれて得たものだったし、そのCKは福満がヘッドでつないでドウグラス・グローリが決め、決勝ゴールのカウンターも主役はこの2人。守備でも新潟が徹底的に動かしてくるボールを追い回し、サイドからしっかりと中央に絞って危険なパスコースを消したことで、新潟の得意の形に持ち込ませなかった。奪えば外に開いて、自慢の推進力でぐいぐいと前に出ていった。
「11連勝はシンプルにうれしいですし、追いつかれたときには10連勝で止まるのかと頭をよぎったので純粋にうれしいです。1試合1試合、勝ちにこだわってきて、結果として11連勝となりました。次も勝って、連勝が伸びればいいと思います」
この勝利で首位の徳島ヴォルティスとついに勝ち点で並んだ。もちろん、昇格レースが安泰のまま静かに終わるわけはない。一気に突き放すためにも、これまで通りリアリストに徹してまた次の1試合にフォーカスしていくだけだ。
写真◎J.LEAGUE