明治安田生命J2リーグ第23節で京都サンガはアウェーのジェフユナイテッド千葉戦に臨んで、0-0で引き分けた。攻めあぐねたという印象も拭いきれなかったが、それでも後半に野田隆之介が投入されて活性化。「強さ」という武器を示した。

上写真=チャン・ミンギュとハイボールを競り合う野田。前線に軸ができた(写真◎J.LEAGUE)

■2020年9月30日 J2リーグ第23節(@フクアリ:観衆1,768人)
千葉 0-0 京都

「質の高いカウンターができました」

「ターゲットになりますし、体を張って起点になってもらおうと入れました」と京都サンガの實好礼忠監督。

 53分、野田隆之介の出番だ。

 身長185センチのパワーヘッダー。体の軸が強く、恐れることを知らないメンタルの持ち主だから、0-0の局面を打開するためにはうってつけの「強さ」である。

「FWのところにボールが入っていなかったので、ボールを収めて前を向くというのが求められていることでした。そこをしっかり意識して入りました」

 實好監督からはチーム全体に、インサイドの選手が裏を取って相手の守備の組織を間延びさせるように前半のうちから指示が出ていた。しかし、ブロックの間にボールを差し込んだり奥行きを作るような自発的なアクションが少なかった。そこで、野田がターゲットになったのだ。

 もう一つの効果は、ピーター・ウタカの「自由化」だろうか。野田が最前線に立つことでウタカがより広範囲に動くことができるようになって、ボールを引き出し、前を向いて千葉の守備を撹乱していった。野田もフィニッシュに専念できる。

「ボールを持てる時間もありましたけど、フィニッシュに行けていなかったので、そこにいかに持っていくかは意識していました」

 その象徴的なシーンが85分に訪れた。自陣で相手の横パスが弱くなったところを飯田貴敬が奪ってカウンター、そのまま右サイドをドリブルで一気に駆け抜けると、ウタカが中央へ、野田が逆サイドのエリアへ追走していく。ポッカリと空いた逆のスペースに入った野田の元へ、飯田からていねいなクロスボールを送り届けられた。

 野田は的確な胸トラップから左足でシュート…したのだが、ほんのわずかコースがそれて右に切れていってしまった。この日、最もゴールに近づいたチャンスは、惜しくも実らなかった。

「展開的に自陣で押し込まれて守備をする時間でしたが、質の高いカウンターができました。カウンターは常に狙っていて、ウタカと僕がスピードアップして、決められれば良かったんですけど…」

「フィニッシュは前半より多かったから、最後のパスの質、シュートの質をもっともっと高めていこうと話したけど、決めることできませんでした」

 一撃必殺、とはいかずに反省の言葉が続いたが、野田が入って攻撃にパワーが注入されたのは確かだ。ここからの戦いにその「強さ」がどれだけ有効かは、この試合で見せることができただろう。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE