「愛媛県のサッカーにスイッチを入れる」
――今年はどのチームもタフな戦いを強いられますが、今シーズンの展望を聞かせてください。
川井 予想しづらいですね。連戦も続きますし、さらに読めないのがコロナです。PCR検査をして陽性が出た場合はかなり難しくなるでしょう。想定外の事態も起こると思うので、いろいろなことを予想して準備しなければいけません。一方で、それを緻密にすればするほど、崩れたときのダメージも大きいと思います。なので、想定しながら準備するところと、イレギュラーが起こったときに場当たり的にやっていく即興性も必要になると思います。その両面を常に持ちながらやらなければいけませんが、試合に勝つというところは変わらないので、それはミーティングで選手たちにも伝えました。
――今季は昇格あり・降格なしという特例措置が取られましたが、それを聞いたときはどう思いましたか。
川井 降格のことはあまり考えていませんでしたが、多少なりともそのリスクはどのチームにもあったはずです。なので、今年に関してはJリーグとして良い判断をしたのではないかと思います。ただ、選手たちに今季の目標は(J1参入)プレーオフと言っていたので、プレーオフがなくなったことのほうが困ったなと。でもJ2リーグにいる以上、1位、2位になる権利はどのチームにもあるので、そこを目指すのは当然のことです。
――再開初戦は徳島ヴォルティスとの「四国ダービー」に決まりました。
川井 ホームでの四国ダービーを無観客で行なうのは、運が悪いなと(笑)。我々のような地方クラブとしては、ダービーは一番お客さんが入るカードなので。まずはそこを考えてしまいましたね。でも、リスタートの試合がダービーというのは、ある意味でよかったと思います。ファン・サポーターを熱狂させるためには一番いい相手なので。 “サッカーっていいよね”と思ってもらえるような試合を、ヴォルティスさんと一緒に展開していきたい。愛媛県では小中高と、まだ対外試合が禁止されている状況で、我々が一つ目にできるのは大変意義のあることです。愛媛県のサッカーに関わっている人たちに、僕らがスイッチを入れる。そういう試合にしたいと思っています。
――いよいよ今週末からJリーグが再開します。川井監督にとって“Jリーグが帰ってくる”ことの意義を教えてください。
川井 最初の話に戻りますが、サッカーがなくても世の中は動いているし、Jリーグは特効薬じゃない。そういう意味では、Jリーグはなぜ必要なのかが問われていると思います。だからこそ、Jリーグの素晴らしさをもう一度認識してもらう必要があり、そのための僕らクラブでもあります。
――ありがとうございました。最後にファン・サポーターの方々にメッセージを。
川井 こういう状況になるとはファン・サポーターの皆さんも想像していなかったと思います。ただ、こうなってしまった以上、この状況に対応しながらやっていかないといけません。サッカーの存在意義、パワーを示すために我々は全力を尽くします。
最初は無観客ですが、こういう楽しみ方もあるなと思っていただきながら、そしてスタジアムに再び集まれるようになったときには、我々と喜怒哀楽を共有してほしいと思います。また皆さんと一緒に進んでいけることを楽しみにしています。
取材・構成◎多賀祐輔 写真◎愛媛FC、J.LEAGUE
◎Profile
かわい・けんた◎1981年6月7日生まれ、愛媛県出身。愛媛FCユース出身で、桃山学院大を経て2004年にトップチームに加入。現役時代はFWとしてプレーし、2006年にJリーグデビューを果たした。同年のシーズン終了後に引退し、指導者の道へ。愛媛FCレディースやU-18を指揮したのち、2018年5月にトップチームの監督に就任した