この連載では再開後のJリーグでさらなる活躍が期待される各クラブの注目選手を紹介していく。連載第19回はジュビロ磐田のストライカー、小川航基について綴る。

点取り屋の覚悟が見える

J2開幕戦の勝利に大きく貢献した小川。リーグ再開後の活躍に期待が膨らむ(写真◎J.LEAGUE)

 昨年は代表戦で見事なゴールラッシュを演じている。U-22代表が挑んだ6月のトゥーロン国際トーナメントではメキシコとの準決勝で、さらにブラジルとの決勝でそれぞれ値千金の同点ゴールを奪った。極め付きは12月のE-1(東アジア)選手権の香港戦だ。A代表デビュー戦でハットトリックの離れ業。史上3人目の快挙だった。

 いくら実力があっても節目となる試合や重要な一戦で点が取れるとは限らない。そこが面白さであり、また難しさでもある。小川には何か特別な場面を成立させる能力が備わっているのかもしれない――という妄想がふくらむばかりだ。

 どれだけ点を取ったかという数字だけでは推し測ることのできない何か。つまりは(運を)もっている人なんじゃなかろうか――と。過度に期待するなと言われても無理な相談である。外国籍選手枠の拡大に伴い、異邦人のストライカーがゴール前でブイブイ言わせる流れに拍車がかかってきた。Jリーグを代表する日本人の点取り屋が続々と大ベテランの域に達し、影が薄くなってきたこととも無関係ではないのだろう。

 ただ、小川がいる。

 何しろ磐田というクラブは日本人ストライカーを大事に扱ってきた。中山雅史、高原直泰、前田遼一と歴代のJ1リーグ得点王を3人(計5回)も送り出したのは磐田だけだ。そんな目端の利くクラブが「これ」と見込んだ大器なのである。

 中山、高原、前田は三者三様。いずれも尖った個性に持つ偉才だったが、こと点を取る才能にかけては小川も負けていないはずだ。いや、誤解を恐れずに言うと、9番のエキスパートという意味では小川が一番かもしれない。先人たちのようにチャンスメーカーとしても器用に立ち回る余白は少ないように感じるが、だからこそストライカーらしくもある。
 
 点を取ること以外に生きる道なし――そういう覚悟を背負って戦っているのが小川という人だ。そうした思いを汲み取り、せっせとラストパスを送り届ける味方がいれば、いくらでも点を取るだろう。とにかく最後は小川にボールを回せ――それこそ勝利への、ひいてはJ1昇格への近道だと思う。存分に光輝を放つはずだ。

Profile
おがわ・こうき◎1997年8月8日生まれ、神奈川県出身。桐光学園から2016年に磐田に入団。翌17年4月にはルヴァン杯でハットトリックを達成するなど飛躍が期待されたが、5月のU-20W杯で負傷し、長期離脱を強いられると、以降しばらく浮上のきっかけをつかめなかった。だが、昨季途中に水戸に期限付き移籍してブレイク。今季は磐田に復帰し、9番を背負う。東京五輪代表候補。FW。186㎝、76kg

昨季途中で水戸に移籍し、17試合で9得点を記録するなど能力の高さを示した(写真◎J.LEAGUE)

昨年12月にA代表でデビュー。その香港戦でハットトリックを達成した(写真◎Getty Images)