1月9日、東京ヴェルディが梅本大介氏のゼネラルマネージャー就任を発表した。Jクラブが選手経験のない人物をGMに起用するのはまりない。羽生英之社長は「本当の意味でのGMが必要。クラブのキーマンになってほしい」と就任理由を説明し、期待を語った。当の梅本GMはどんな考えを持ち、何をやろうとしているのか。前編後編の2回に渡って、新生ヴェルディのキーマンのインタビューを掲載する。

上写真=新体制発表で決意を語る梅本GM(写真◎BBM)

≫≫梅本GMに聞く◎後編「2030年にCWCで優勝するチームにしたい」

取材◎佐藤 景

GM就任の経緯と意味

――1月8日にゼネラルマネージャー(GM)就任が発表されました。東京ヴェルディとパートナーシップを結ぶ株式会社アカツキの執行役員、ヴェルディの社外取締役という立場から、両方の職を辞してGMに就任した経緯を聞かせてください。

梅本大介GM もともと昨年の1月からヴェルディのお手伝いをさせていただいて、4月からは株主総会を経て社外取締役になりました。仕事としては経営全般について、羽生英之社長のお手伝いをするということでした。アカツキとしても事業側のお手伝いをしたいと思いがあったので、とくにマーケティング面の仕事をしてきました。CRM(顧客情報を一元管理するシステム)のオペレーションの構築、MDの企画とオペレーションの構築、ECの新規導入のほか、スタジアム体験の充実などに取り組みました。

 スタジアム体験については、例えばキッズパークの運営、試合前の煽りムービー、試合中のビジョンの表示や活用の改善などはアカツキから出向している菊地君やヴェルディ社員と一緒に色々な取り組みを始めました。ファンの方からは概ね好意的なフィードバックをいただいていて、事業、オペレーションの両面で今後に積み上がっていきそうな手応えを感じています。

 また、特にユニフォームのデザインやその販促には色々とやりたいアイデアや思い入れがあったので、20シーズンユニフォームについては、デザインやローンチプランの設計にイニシアチブを取らせてもらいました。デザイナーさんやスポンサー営業チームにはかなり無理なお願いをしましたが、その途中でGM就任になり最後まで関われなかったのはかなり残念です(笑)

 一方、クラブの競技面について言えば、19年シーズンは必ずしも順調に進んだ年とは言えず、8月には監督の交代ということになりました。そういったシーズンで社外取締役としてクラブ全般の経営観点でのお手伝いをさせていただいていた中で、強化部にいわゆるビジネスの経験者を一人入れるのがいいのではないかということを感じていました。

――どういうことでしょうか。

梅本GM 強化部というのは、選手やサッカーの目利きをするという観点で、サッカーピープルの専門的な仕事というイメージを持っていました。実際、プロ選手の経験、監督やコーチの指導経験がある方が強化をやられていることが多いと思います。ただ、実際には、予算立案やその進捗管理といったお金の管理、もしくは組織や運用の仕組みづくりをトップとアカデミーを一気通貫で行うというような仕事があり、これはむしろビジネス畑の人間が強みを出せる部分もあるのではないか、ということを感じたということです。
それから、強化部はコストセンター的な位置づけで運営されている部分があるように思います。

 しかし、ヴェルディは育成に強みを持っていますので、アカデミー出身の選手の移籍をもっと戦略的にビジネスと捉えて移籍金をチーム強化の投資に充てていく。さらにいうと、大卒や移籍で獲得した選手も同様に考えることができるのではないか。それは私が素人だから感じた机上の空論かもしれませんが、ビジネス的な視点を持つことで、強化部門でももう少しお金を自分たちで回しながらチーム力を積み上げていくというチャレンジができるのではないかとも感じました。

 去年の私はいわゆる株主、スポンサーであるアカツキから派遣されている社外取締役という立場でした。私の個人的な考えとしては、株主、スポンサーはスポーツオペレーションに口を出すべきではないということを強く思っていまして、それはアカツキの経営陣とも共通理解としてヴェルディに関わってきましたし、その考えは今でも変わりません。ですから19年シーズン、アカツキも私も、強化部を誰にやらせるべきだとか、その上でどんな選手を獲るべきだという部分には口を出すことはしませんでした。

 ただ、経営の観点から仕組みや組織作りとして、強化部門にビジネス人材を入れてみたらいいのではないかというアイディアは羽生社長にご提案させていただきました。