J1昇格初年度ながら上位で戦うFC町田ゼルビアの快進撃を支えているのが、ボランチの仙頭啓矢だ。10節終了時点でチームは2位につけている。5月3日は仙頭の古巣でもある柏レイソルとホーム、町田GIONスタジアムで対戦する(15時開始)。注目の一戦を前に話を聞いた。

上写真=好調なFC町田ゼルビアをけん引する仙頭啓矢(写真◎J.LEAGUE)

隙を許さず研ぎ澄まされていく日常

−−チームは開幕から好調で上位をキープしています。現在の成績について、どのように感じていますか。

仙頭 いいスタートダッシュが切れたなと思っています。キャンプから積み上げてきたことが体現できている結果だと感じます。とくに負けたあとの試合で連敗せずにやれていることが本当に大きかったですね。

−−キャンプからの積み上げとは、どういうものでしょうか。

仙頭 町田のサッカー、勝利に徹したサッカーを実践するために、トレーニングに落とし込まれていましたし、徹底されていました。チームとして軸があって全員が同じビジョンを描き、迷いなくプレーできている。そこが上位にいる要因かなと思っています。

−−町田のサッカーという言葉がありました。現在の快進撃を知り、FC町田ゼルビアに興味を持った方も多いと思います。改めてどんなサッカーなのか、説明してもらえますか。

仙頭 勝つために何をすべきなのかを常に考えるサッカーです。相手が嫌がることして、相手がやりたことをさせないサッカー。黒田(剛)監督も普段から話していますが、そこを徹底しています。

−−仙頭選手は今季加入ですが、町田がプロでは6クラブ目になります。経験を踏まえてチームを俯瞰することもできると思います。どんな違いを感じましたか。

仙頭 違いというよりも徹底の度合いが異なるという印象ですね。基本的な部分になるんですが、球際やインテンシティ、ハードワークはどんなチームでも重視する部分ですが、町田はその徹底と求める部分がより深い。「絶対に他のチームに負けない」ことが求められますし、目指しています。その中で選手一人ひとりが自分のためではなくチームのためにどうすべきかを理解し、プレーしている。例えばゴールをした、アシストをしたという分かりやすい面だけではなく、それ以外でもチームのために隙なくプレーできているかどうかを常に指摘される。そういう細かい部分にまで目を向けた日常が、最終的な勝ち負けの部分にもつながっていると感じます。

−−隙のないプレーとは、正確にミスなくプレーするということでしょうか。

仙頭 ニュアンスで言うと、人間ならどうしても出てしまう緩みだったり慢心を安易に受け入れず、一切見逃さないという意味です。本当に練習から一つひとつのプレーを気を抜かずにやっていますし、だからこそ研ぎ澄まされていく感覚もあります。自分自身で言っても、シュート練習はこれまでも何回もやってきましたけど、シュート1本に対する考え方、魂の込め方は明らかに変わりました。練習後に疲れるのは体ではなく、頭の中というか。今はそういう毎日なので、成長を実感できます。

−−人間のやることなのだから緩みが出てしまっても仕方がない、1試合の間にはそういう時間もあるとはよく言われますが。

仙頭 それが隙だという理解です。チームとして、あるいは個人として緩みが出たときには、監督からしっかり言葉として指摘されますし、そのことで全員がやらなければならない気持ちになる。一人がチームに与える影響の大きさをすごく感じるというか、責任に対する考え方は自分自身、変わったと思います。みんなも同じだと思うので、それがワンチームとなって、強い組織になっているとも思います。

−−そういうチームの中で、仙頭選手が黒田監督に期待されていることはどんな点でしょう。

仙頭 FC町田ゼルビアのJ1初年度ということで、J1を経験してきた選手としてその感じたものをチームに還元してほしいと言っていただきましたし、プレー面では自分の特徴を理解していただいていると思うので、しっかり役割を果たしていきたいと思います。

−−開幕戦で退場したこともあって2節は欠場となりましたが、他リーグ戦9試合すべてにボランチで先発しています。

仙頭 ピッチ上では攻守をつなぐ役割を果たしていきたい。町田は2ボランチを組んでいますが、僕の場合は攻撃の部分で、より前の選手を活かすプレーを期待されていると思うので、その期待に応えたいと思っています。それから今、チームは若い選手が多いので、自分が引っ張っていかなければいけないとも思っています。士気を高めたり、声を出していくことも意識していますし、そういう存在になりたいですね。

−−キャリアを振り返ると、これまでもボランチでプレーしたことは何度かあっても、アタッカーとしてピッチに立つことが多かったと思います。ボランチでプレーすることについてはどう考えていますか。

仙頭 おっしゃられるように、今まではFWだったりサイドだったり、より得点に関わるようなポジションを務めることが多かったですが、僕自身、実はずっとボランチはやってみたいポジションでした。自分はスピードとか強さ、サイズも含めてですが、そういう能力が高いタイプではありません。頭を使って予測や判断、ポジショニングで勝負する選手だと思っていて、そう考えた時に自分に合うのはボランチだという思いがありました。もちろんどのポジションでも求められれば全力でプレーしますけど、自分の特徴を生かす場所でなら、例えば大きな選手にだって勝ることができると思いますし、やり甲斐も感じます。いまは毎試合、課題が出てきますけど、同時にサッカーの楽しさや深さを改めて感じていますね。

−−ボランチでコンビを組む柴戸海選手とのバランスや距離感が良い印象を受けます。

仙頭 海は本当に守備範囲が広くてボールを刈り取る力がすごい。その意味で助けてもらっています。そのぶん、攻撃のときには僕がゴール前に入っていくように、というのは監督からも言われているところですが、海がいるので思い切って前に行ける部分はありますね。

−−ワンタッチパスやサイドの選手の使い方やタイミングに、仙頭選手らしさが表れているように感じます。

仙頭 プレッシャーを剥がすことは意識していて、昔から技術の向上はこだわってきたので、そこは自分の特徴を出したいと思っています。このチームには前にいい選手が多いですし、とくにサイドにはそろっているので、彼らが活きるようにいかにボールを届けられるか、と常に考えていますね。あの輝かしい時代のバルサのイニエスタやシャビのプレーが好きなんですけど、一本のパスで局面を変える役割を担うはこのチームでは自分だと思うので、そういうタイミングでは効果的なパスを出したいと思います。

−−昨年のセレッソ大阪の香川真司選手ではないですが、ボランチで新境地を拓いたのでは?

仙頭 学生のときもプレーしていましたし、去年、レイソルでもボランチをやりたいと言っていたのですが、残留争いの渦中にもあってそういうわけにもいかず、でした。ゼルビアでこうしてプレーできているのは、うれしいです。ただ、まだまだこれからなので。さらに成長していきたい。