攻撃サッカーを標榜する浦和レッズが、10試合を終えて歯車を一つ前に進めた。名古屋グランパスを迎えた4月28日の明治安田J1リーグ第10節で、左サイドの変化がその一つのきっかけになった。ウイングの中島翔哉、インサイドハーフの安居海渡、サイドバックの渡邊凌磨がそれぞれの視点から見た90分とは?

「考えすぎてはいない」が意味すること

 そんな組み合わせを、後ろからの視点で振り返ってみる。左サイドバックの渡邊凌磨である。中島との関係についてはこんなふうに話している。

「もうちょっとスペースを使えたかな、というのもありますけど、相手も5バックでなかなか数的優位は作れない状況でもあったので、なるべく後ろからサポートしながら、前の人たちが攻撃しやすいように、と考えました」

 ここでも、中島をできるだけ前に押し出すことを重要視している。安居についても同様だ。

「守備範囲が広い選手だし、走れるし、僕もすごく助かりました。だからもっと、攻撃で僕から海渡に当てるシーンが増えればよかったな。相手はマンツーマンで来る中で、なかなか真ん中にボールを入れるのが危険だったから、この試合では仕方なかったけれど」

 渡邊自身が攻撃のビッグチャンスに絡むシーンは多くはなかったものの、サポート役に回って彼らを押し出すことで支え続けた。

 チーム作りとは繊細なもので、選手の組み合わせやコンディション、対戦相手の戦い方や時間帯によって、不思議なほどに乱高下する。ただ、どのチームも10試合を終えて徐々に安定してくる時期でもある。浦和もそう。

「みんなの良さをある程度分かってきて、それぞれのやりたいこととか、チームとしてやりたいことを踏まえてプレーできています。そこはそんなに考えすぎてはいないかな」

 新しいスタイルを取り入れたことで意識を強く置きすぎるポイントがたくさんあるシーズンのスタートだったが、それが徐々にこなれてきた。渡邊の「考えすぎてはいない」という言葉は自然体を意味しているから、チームがうまく回転し始めたことを示しているのかもしれない。