31年のときを経て、Jリーグ元年の開幕カードが再現される。2月25日、国立競技場で16年ぶりにJ1復帰を果たした東京ヴェルディと2年ぶりのリーグ優勝を狙う横浜F・マリノスが激突。両チームの守備を支えるキーマンが、伝統の一戦への意気込みを語った。

上写真=開幕PRイベントでがっちり握手を交わした東京V の谷口と横浜FMの飯倉(写真◎J.LEAGUE)

伝統の一戦が開幕カードに!

 日本リーグ時代からしのぎを削り、かつてはJリーグの覇権を争ってきたライバル同士。東京Vの下部組織で育った谷口栄斗は、その歴史こそ知っているものの、正直なところ、伝統という点にピンとはきていなかった。

「僕にとってのマリノスは、小中高と世代を引っ張ってきたチーム。近年はJリーグで優勝争いをしていますし、ずっと上にいる存在でした。ライバル視はしていなかったです」

 1999年生まれでは無理もない話。念願のJ1昇格を果たし、自身もようやくトップカテゴリーの舞台に立つ実感がわいてきたところだ。ただ、城福浩監督のもとJ2で積み上げてきた守備力には自信を持っている。チャレンジャーとして、堂々と挑む覚悟を口にする。

「腰を引けた戦いをすれば、好きにやられてしまいます。勇気を持って、ハイライン、ハイプレスで勝負していきたい。前向きにボールを奪えれば、チャンスはあると思っています。Jリーグ最高峰のアタッカー(ヤン・マテウス、エウベル、アンデルソン・ロペス)がいますけど、僕は彼らのような選手たちと対峙することを望んでいましたし、自分がどれだけできるかが楽しみです」

 2月14日に行われたACLのバンコク・ユナイテッド(タイ)戦をチェックし、横浜FMのスキもみつけていた。ハリー・キューウェル新監督となり、連係面はまだ完璧ではないと見る。

「監督が代わり、試行錯誤しているところもあると思います」

 若さあふれる新生ヴェルディの売りは、ハードワーク。全員で90分間、エネルギッシュに走り切ることを誓う。24歳のディフェンスリーダーは、アグレッシブさを前面に押し出していくという。

「僕らには、まだ伸びる余地があります。長いシーズンを通して、チームとしても、個人としても、もっと成長していきたいです」

 

 対して、悠然と構えているのが昨季2位の横浜FMだ。プロ19年目を迎える守護神の飯倉大樹も、泰然自若としていた。

「今季のチームはJリーグ優勝、ACL優勝を目標に掲げています。開幕戦もリーグ制覇するための1試合です」

もちろん、両クラブの歴史的な背景は理解している。横浜FMで指導を受ける松永成立GKコーチは、31年前のオープニングマッチに出場していた一人。飯倉は当時の映像をビデオテープが擦り切れるほど見たという。

「伝統ある一戦。マリノスのプライドを持って臨みます」

相手が昇格組であっても、油断はない。いまはキューウェル新監督とともにチームづくりを進めている段階。昨季とはプレスのかけ方が変わり、前から人を捕まえに行く守備を再確認している。

「仕上がりはまだ100パーセントではないですが、シーズンを進めながら少しずつ上がっていけばいいと思っています」

 攻撃面のリニューアルも着々と進む。サイドアタックに一家言を持つ指揮官は、新たなエッセンスを注入しているようだ。

「ハリーは元ウイングの選手だったので、ワイドの使い方にはこだわりがあります。いままでの攻撃的なパスサッカーにプラスアルファされ、マリノスの形になっていけば、もっと進化していくはずです」

 横浜FMの「矛」か、東京Vの「盾」か――。31年前とは逆の構図となった伝統の一戦から目が離せない。

取材◎杉園昌之