浦和レッズは18日、ホームでアルビレックス新潟と対戦し、先制されたものの、2−1で逆転勝利を飾った。酒井宏樹の同点ゴールに続き、前半終了間際に決勝点を叩き込んだのが明本考浩だ。複数のポジションでプレーできる万能性と豊富な運動量、体の強さも武器とする選手だが、今季は開幕からその全ての魅力を左サイドバックというポジションで表現している。

上写真=躍動感あふれるプレーで存在感を示す浦和の明本考浩(写真◎J .LEAGUE)

文◎国吉好弘

スコルジャ監督の信頼も厚い

 早い時間帯に失点し、30分まではアルビレックス新潟の巧みなボール回しにペースを握られた浦和レッズだったが、35分に酒井宏樹の豪快な一撃で追い付くと主導権を取り戻して、前半アディショナルタイムにはCKからのこぼれを明本考浩がアクロバティックなボレーシュートを叩き込んで逆転した。

 後半は浦和がペースを握りながらも互いに相手にチャンスを与えない守備でスコアは動かず、浦和が2‐1で勝利をつかんで第3節の初勝利から3連勝、3勝2敗と勝ちを先行させた。右の酒井、左の明本と両サイドバックのゴールで勝ち点3を手にした浦和は、試合を通しては「ベストなパフォーマンスではなかった」(マチェイ・スコルジャ監督)が、2点ともシュートそのものが素晴らしかった。

 とりわけ、決勝点となった明本のゴールは見事だった。右CKからファーサイドへ送られたボールがアレクサンダー・ショルツと競り合った相手DFの頭に当たってニアサイドへ飛んできた。それを明本が体を投げ出して左足で合わせた。本人は「勝手に体が動いた。本能ですね」と咄嗟の判断で生まれたゴールだと振り返っている。

 この日はゴールだけでなく、左サイドバックとして攻守に好プレーを見せ、スコルジャ監督も「明本は良いプレーを見せていた」と評価していた。開幕前には左サイドバックとして京都サンガから復帰した荻原拓也がプレシーズンで好プレーを見せ、昨季安定したプレーを見せた大畑歩夢もいるため、明本をこのポジションの3番手とする報道もあったが、フタを開ければ開幕から明本が左サイドバックとしてプレーしている。それぞれに良さはあるものの、攻守にわたる総合力から判断すれば妥当な人選といえる。対人に強く、運動量があり、技術的も高く、攻撃への推進力もある明本は監督にとって使い勝手の良い選手であり、評価が高いのは当然だろう。

 明本は類まれなユーティリティープレーヤーで、国士舘大学時代、今を時めく三笘薫、旗手怜央、上田綺世の「ビッグスリー」とともに世界一となった2019年ユニバーシアード代表でもボランチでプレー。プロとなった栃木SCではストライカーとして得点源となった。そしてレッズに移籍すると、左サイドバック、左サイドハーフ、アタッカーとしても起用され、右サイドでプレーしたこともあった。

 ただ、オールラウンドな能力があり、どこのポジションこなせるため、昨シーズンまでは出場機会は多いものの固定されたポジションがなかった。今季もスタート時には左サイドバックに固定されているが、荻原も好調なため後半途中から起用されて明本が1列前に上がるケースも多くなっており、これで左サイドが活性化する効果を生んでいる。

 当然この布陣変更もチームにとってプラス材料なのだが、個人的にもどかしいと感じるのは、明本が日本代表に選ばれるためには左サイドバックとして固定されることが望ましいと思うからだ。能力的にはすでにそのレベルにあり、3月シリーズに招集された日本代表の顔ぶれを見ても左サイドバックが手薄であることは明白だ。

 もちろん、スコルジャ監督としてはチームの勝利が一番であり、チームを勝たせるためにベストの選択として明本のポジションを決めている。その判断を受け入れるのは言うまでもないのだが、左サイドバックでプレーしているときには、よりハイレベルで安定感のあるプレーを見せ続けてほしいところだ。そうすれば、間違いなく代表でプレーするチャンスが訪れるーーそう感じさせるだけの力を、現在の明本はピッチで示している。