Jリーグは11月7日、年間表彰式の『2022Jリーグアウォーズ』を開催した。サッカーマガジンWEBも参加する「DAZN Jリーグ推進委員会」では、今季のベストイレブン受賞者にインタビューを実施。川崎フロンターレの家長昭博がキャリアハイの12ゴールを挙げるなどの活躍で、自身4度目の選出も納得だった。

「涙を言葉で表現できていたら泣いていない」

インタビューではこの1年の思いをさまざまに語った(写真◎DAZN)

――9月10日の第29節、ホームのサンフレッチェ広島戦で、佐々木旭選手が左サイド深くからマイナスに折り返したボールを、家長選手が左足で決めています。そのあと、佐々木選手に駆け寄って祝福していて、試合後には報道陣に「今日は彼をほめてあげてください」と言っていたことも、印象に残っています。若い選手を引っ張ってあげたい、という親心というか。

家長 いや、まあ、そこまでの熱はないですけれど(笑)、やっぱり若い選手が自信を持ってくれたり、自分はやれるんだと気づいてくれることはチームにとって本当にプラスになります。そのときはアシストしてもらいましたけど、彼がメンバー外のときにもずっと練習していたのは見てきましたし、それが報われると、選手として自信になるじゃないですか。

 彼もいろいろなプレッシャーや期待や不安をいっぱい持っていたと思います。でも試合が始まってすぐに自分自身の良さを出そうといいプレーを続けていたので、メディアの皆さんにそうお願いしましたね。

――同じ広島戦ではPKのキッカーを知念慶選手に譲っています。それも同じように、自信をつけてもらおうとしたのかな、と感じました。

家長 まず、「譲ってあげた」という感覚はないんです。PKを取った人から僕のほうが譲ってもらっている立場だと思っていますから。でも、PKって見ている人が感じるよりもメンタル的に難しくて、それでも蹴らせてくれと言う年下の選手が出てきたことはうれしかったですね。

――知念選手はどうしても蹴りたくて、3回ぐらい懇願したと話していました。

家長 最初に僕が蹴ると言ったんですけど、試したんです。知念が本当に蹴りたいのかどうか。中途半端な気持ちで言っているのかどうか。でも、本当に蹴りたいと言ってきた。知念はストライカーですけど、どのポジションの選手でも蹴らせてくれと言ってくる選手が現れるのをいつも待っています。

――クールに見えても、その広島戦で自身2点目を決めたあとにおどけるようなこともありました。「みんな僕のことを知らないだけですよ」と笑っていましたが、ストレートな感情をとても大事にしているんだな、ということが伝わってきました。

家長 僕、感情ありますし(笑)。なんなら、とても感情を大事にしているタイプだと思いますよ。自分の感情や言葉、自分で決めたことに対しても大事に思っているので、みんなにクールだと言われるような感覚は自分自身に対しては持っていないですね。

――そんな感情がさらにあふれるのを見たのは、今季最後のホイッスルが鳴ったあとでした。GKチョン・ソンリョン選手の退場で1人少なくなってもFC東京に勝利を収め、でも優勝にはわずかに手が届かなかった最終節の試合後に、涙が見えました。どんな意味を持つ涙だったのでしょう。

家長 なんでしょうね……涙を言葉で表現できていたら泣いていないと思います。そこに理由とか言語化するようなことはいらないのかなと思います。

――鬼木監督がその試合後の会見で、優勝しなければそれ以外なら何位でも変わらない、と思っていたけれど、今回の2位は意味があるように感じる、とおっしゃっていたんです。

家長 意味のあるものにしたい、とみんな願っています。意味のあるものにしないと、2位でも3位でも一緒だと思います。ただ、いまの時点ではそう願いたいという願望のほうが強いんじゃないかな。

――家長選手自身は、今回の2位をどんな思いで受け止めますか。

家長 僕は2位が意味がないとまでは言いませんが、2位に価値を見出すのは、いまは難しいですよね。

――その悔しさの分、来年はトップに返り咲くことができますように。

家長 はい、そうですね。がんばります!

取材・構成◎平澤大輔(編集部)

Profile◎いえなが・あきひろ/1986年6月13日生まれ、京都府長岡京市出身。京都府の長岡京SSSからガンバ大阪ジュニアユース、 ガンバ大阪ユースを経て、ガンバ大阪でプロキャリアをスタート。大分トリニータ、セレッソ大阪、マジョルカ(スペイン)、蔚山現代(韓国)、ガンバ大阪、マジョルカ、大宮アルディージャとプレーして、2017年に川崎フロンターレに加入。ハイレベルの技術と戦術眼で毎年タイトルを獲得してきた。2022年は移籍後初の無冠となったが、自身4度目のベストイレブンに。173cm、70kg