明治安田生命J1リーグで逆転優勝を狙う2位の川崎フロンターレは、10月29日の第33節でヴィッセル神戸を迎えた。今季ホーム最終戦となる90分で、最後はPKを家長昭博が蹴り込んで、2-1で勝利。首位横浜F・マリノスと勝ち点2差のまま、最終節にすべてをかける。

上写真=決勝PKを決めた家長昭博を中心に喜びの輪。川崎Fが逃げきって最終節に優勝の可能性を残した(写真◎J.LEAGUE)

■2022年10月29日 J1リーグ第33節(等々力/22,110人)
川崎F 2-1 神戸
得点者:(川)マルシーニョ、家長昭博
    (神)小林祐希

「それがゴールの確率を上げる」

 川崎フロンターレは大逆転優勝には、勝つしかない。ホーム最終戦で、その唯一無二のミッションをやり遂げた。

 序盤こそ慎重に入ってヴィッセル神戸に押し込まれたものの、あっけなくペースを引き戻す。左右ともにバランス良く攻めて神戸の重心を押し下げると、20分には先制した。右から家長昭博がゴール前にハイボール、相手が処理を誤ったところでマルシーニョが奪って蹴り込んだ。

 しかし、このあとも攻め込んで何度もチャンスを作りながらも点が決まらないという、最近の良くないくせが顔をのぞかせる。すると51分、小林祐希に決められて同点に追いつかれてしまう。左足で強くたたいたボールが縦に落ちてゴール右に飛び込むスーパーFK。

 神戸からすれば、吉田孝行監督が悔やむのは、とにかく「前半の出来が悪かった」ということ。「前半だけで言えば川崎にやられたけれど、後半は互角に戦えた」と振り返った。だから、この同点ゴールを機に押し込みたかった。74分にはアンドレス・イニエスタを8月6日のセレッソ大阪戦以来、約2カ月半ぶりに登場させたものの、ゴールを奪うまでには至らなかった。

 だからこそ、川崎Fから見れば、前半に良くなかった神戸にたたみかけられなかったことで苦しんだ。それでも攻めの姿勢は失わず、79分にはマルシーニョのパスを半身で受けた小林悠が倒され、ファウルの判定。最初はFKが与えられたが、VARチェックのあとに主審がオンフィールドレビューを行い、PKに。これを84分、家長昭博がゴール右に蹴り込んで、ついに突き放した。

 鬼木達監督は「緊迫した中でも2点、3点と取りに行かなければならないが、頭の中で1点を大事にしてしまうかもしれない」と慎重さが前への迫力を失わせたと見ていた。それでも、じっくり攻めて、PKによる得点だったとはいえ勝ち越すことができたのは大きい。「なかなかうまくいかない時間や、失点したことで慌てるシーンもありましたけど、途中からは冷静でした。迫力がなくなるというとらえ方にもなるかもしれませんが、それがゴールの確率を上げると思っています」と、じっくり仕留める戦い方を選ぶことができた成長を称えた。

 首位の横浜F・マリノスも勝ったため、勝ち点2差のまま大逆転優勝の可能性を残して最終節へ。FC東京との「多摩川クラシコ」で勝って、天命を待つ。

現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE