「僕が隠れずに顔を出さなければ」
――その言葉を聞いていると、やりたいプレーと周りを生かすプレーのバランスについては、しっかり頭の整理ができているようですね。
川崎 リスク管理をしながらも、今回のアシストのシーンがそうだったように、ここだというところで出ていけるのが京都の良さだし、僕自身の良さでもあります。そこはつぶしてはいけないし、僕が行けば武田選手がおりていったり、そういう周りとのコミュニケーションもできてきているので、僕の良さが出やすくなっているのだと思います。
――いまがその瞬間だ、と感じる能力と一瞬の判断、そして技術が今回のアシストで光った部分ですね。そういうパスへの自信やこだわりを聞かせてください。
川崎 いや、あんまり自信ないんですよ…。でも、ボールを受ける選手のことを考えて、なるべく相手から遠いほうの足にと考えて出していますし、その次のプレーをイメージして、ここに出せば次はうまく相手のプレッシャーから逃げやすくなるとか、トラップして突破しやすくなる、というように考えています。
――その上で、25試合出場の時点で3アシスト。この数字、自分では多いですか、少ないですか。
川崎 もちろん、欲を言えばもっと得点に絡んでチームを勝たせたい気持ちはありますけど、シーズン前から目標の数字を決めていたわけではないので、3アシストは良くもないし悪くもないかな、という感じですね。
――強度、連続性、スタミナが植えつけられているシーズンだと思いますが、京都でのプレーの先にはパリ・オリンピックもあります。
川崎 周りからも期待されているのは感じますし、僕自身もオリンピックで日の丸を背負って日本を勝たせたい気持ちがあります。もちろん、意識はしています。
――目の前の試合に集中しながらも、もっと大きな場所に立つことをイメージすることも大事ですよね。
川崎 (U-21日本代表が参加した3月の)ドバイカップのころまではあまり意識はしてこなかったんです。でも、9月のヨーロッパ遠征でスイスとイタリアと試合をして、強度の高さを感じましたし、そこはJ1でもまだまだ世界には追いついていないと感じました。
――そうした経験を重ねて、またプレーの幅が広がったところもあるのではないでしょうか。
川崎 代表ではもっともっとボールを受けること、もっとゲームを作ることを求められています。京都のスタイルではボールを受けたら前へ、を選択しますが、代表ではキーパーへのバックパスを使ってでもボールを触ってゲームを作って相手を引き出そうとすることが多いですね。求められることは違っても、ボールを受ける姿勢が大事なのは変わらないですから、僕が隠れずに顔を出さなければという意識は日頃からするようになったかなと思います。
取材・構成◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE / KYOTO.P.S.
※本文中の記録などはすべて10月10日時点
かわさき・そうた◎2001年7月30日生まれ、山梨県出身。ヴァンフォーレ甲府のU-12、U-15から京都サンガF.C.U-18へと進み、19年8月に2種登録、20年からプロとして加わった。鋭い予測で動き出すインターセプト、ボールを刈り取る激しい球際の勝負を自慢にしていて、さらに豊富な運動量やゴール前への飛び出しも精度を高めている。21年に主力として戦ってJ1昇格に貢献、自身初のJ1でのシーズンとなった今季も、チョウ・キジェ監督が託した「ホールディングセブン」という役割で、チームをコントロールしている。172cm、68kg。