8月25日のAFCチャンピオンズリーグ準決勝で、浦和レッズの勝利の立役者の一人がGK西川周作であることに異論はないだろう。PK戦で最初の2人を続けてストップして歓喜を呼び起こした。その根底にあるのが「落ち着き」。静かな心が歓喜と興奮を呼んだ。

「5本」というストーリー

西川周作はPK戦だけではなく、120分を通して安定感を示した(写真◎AFC)

「試合の中でのPKも読みが当たっていたので(55分の全北現代の同点シーン)、落ち着いてゴールマウスの前に立つことができましたし、PKに関しては練習からジョアンがいいアドバイスをしてくれたので、やるだけだなと頭の中で落ち着いていました。解決策があるのでメンタル的に落ち着くことができましたし、相手の表情を見ると相手の方がプレッシャーがかかっていたのではないかと思います。決めなければいけない状況ですし、こっちは一つ止めれば必ず勝てると信じていました」

 今季から就任したジョアン・ミッレGKコーチがこれまでの常識を覆す指導を繰り返して、「自分の成長を感じています」と大きな信頼を寄せている。常に「一緒に戦っているよ」と声をかけてくれるという。PK戦のアドバイスは「説明するのは難しいので、秘密です」と笑わせたが、どんな内容であっても、それが西川に「落ち着き」というオーラをまとわせてくれたことだけは確かだ。

「遅れてでも最初はしっかり跳ぶといったように、5本ある中で持っていき方はあって、じっくりと地に足をつけて相手を見ることができました」

 5本を通したストーリーを描いて臨んだからこそ、欲をかかずに1本目で相手をじっくり見ることができた。

「そして、僕の後ろにはファン・サポーターがいて、相手にプレッシャーをかけてくれたので、一緒に止めることができましたね」

 スタジアムを真っ赤に包む「仲間」たちのパワーは、驚異的だった。

「これで、自分たちでリベンジする場所に帰ることができました。決勝に行けたからOKではなくて、そこで勝ってみんなで喜ぶことをイメージしていますし、ファン・サポーターのみんなもここで満足していないと思います。勝ちきって、アジアナンバーワンになって初めて、みんなで喜びたいと思います」

 2019年の決勝で敗れた借りを返す「リベンジファイナル」は、2023年2月19日に西地区のクラブの本拠地に乗り込んで戦い、26日には埼玉スタジアムにに帰ってくる。そのときもまた、西川は落ち着き払ってゴールマウスに立っていることだろう。

取材◎平澤大輔 写真◎AFC