4月29日(金・祝)、FC東京は新装となった国立競技場で単独クラブとして初めてJ1リーグの試合を開催する。相手はガンバ大阪だ(明治安田生命J1リーグ第10節/19時開始)。ここでは試合の開催を記念し、FC東京の選手として国立競技場で数々の印象的なゴールを刻み、クラブの歴史をつくってきた『国立男』、石川直宏氏に話を聞く。期待するのは「新たな一歩」が踏み出されることだという。

4・29G大阪戦で証明してほしい

2013年のJリーグの日にゴールをスコアした(写真◎J.LEAGUE)

ーーJリーグカップの決勝は、その2013年を最後に埼玉スタジアムへと場所を移しましたが、新しく生まれ変わった国立競技場で初めて決勝が行われた2020年度(2021年1月4日)の大会で優勝したのが、FC東京でした。柏レイソルを1-0で下しました。

石川 そう考えると、不思議ですね。

ーー新装となった国立競技場の印象がいかがでしたか。

石川 すり鉢状の昔の国立競技場とはつくりは違いますが、とにかく大きいし、立派だし、新しい。でも、不思議とあの場所が持つ独特の雰囲気というか、そういうものは僕の中で一緒だったんですよ。国立はやっぱり国立というか。

ーー特別な場所という感じでしょうか。

石川 ここでプレーしたいと選手は思うでしょうし、威圧感ではなく、パワーを感じました。ああ、「国立はいいな」と。

ーーそんな場所で、4月29日に単独クラブとしては初めてFC東京が主催ゲームを行います。相手はガンバ大阪。

石川 国立競技場で希望を与えてもらった僕が、選手となってプレーして、今度はクラブのスタッフとして主催ゲームに参加させてもらえる。とても感慨深いですし、今度の試合で選手たちが多くの人たちに希望を与えるような試合を見せてくれたらと思います。
 国立競技場はFC東京がJリーグカップや天皇杯というタイトルを手にしてきた場所ですが、そのときに重要だったのは、チームとしての一体感でした。一体感がなければ試合に勝てないですし、タイトルも獲れません。では、その一体感をどうやって生むかというと、一人ひとりがしっかり力を出し切ることが重要です。その姿を見て、他の選手も頑張るし、それがつながってチームは一つになっていく。国立競技場は、そういう一体感のあるFC東京の姿を見せてきた場所だと思うので、今回の試合でもピッチの中から選手に一体感を発信してほしい。それをスタンドでファン・サポーターの皆さんに感じていただき、さらなる一体感と熱量をチームに、選手たちに与えてもらいたい。その雰囲気をともに生み出したいと思っています。

ーー新しい『国立男』が生まれる瞬間が見られそうですか。

石川 そういう選手に、どんどん出てきてほしいと思います。今は僕が若かった頃に比べて選手みんながうまいですし、僕らの時代に一番足りなかった試合巧者という側面も、身につけつつあると思います。僕らの頃はとにかく全力で、ということしかできませんでしたが、そういう熱量を持ちつつ、引き出しの数を増やすことがだんだんでき始めている。エネルギーもあって、サッカーも面白いというのが、チームの求めているところだと思いますが、そこに向かっているんだということをぜひ試合で証明してほしいですね。
 相手はガンバ大阪で、オリジナル10と呼ばれる歴史のあるクラブです。熱い、内容の濃い試合になることを期待しています。そしてFC東京の選手の中に、新しい国立競技場で、ここからまた自分が新しい歴史をつくっていくという思いを発信する選手がいたら、うれしい。4月29日は、そういう視点でもピッチに注目したいと思います。

◆Profile:石川直宏(いしかわ・なおひろ)◎1981年5月12日生まれ、神奈川県出身。横浜FMのアカデミーからトップに昇格。02年にFC東京の期限付きで加わり、スピード豊かなサイドアタッカーとして定位置を確保。翌年、完全移籍を果たし、チームの柱としてプレーするほか、アンダー代表やA代表でも活躍した。以後、17年に引退するまでFC東京の象徴であり続け、現在はFC東京クラブコミュニケーターを務める。

取材・構成◎佐藤 景

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