2月19日のJ1リーグ開幕戦、鹿島アントラーズはアウェーでガンバ大阪と対戦する。サッカーマガジンWEBも参加する「DAZN Jリーグ推進委員会」では、各クラブの新戦力にインタビューを実施。鹿島からは今季加入した樋口雄太が登場し、移籍を決めた理由、そして自身が描く未来について語る。

上写真=水戸のプレシーズンマッチではボランチとして先発し、途中からサイドハーフを務めた樋口雄太(写真◎KASHIMA ANTLERS)

悩んで悩んで悩んで決めました

――昨季は鳥栖で10番を背負い、結果も出しました。今回の移籍の決断は簡単ではなかったと思います。

樋口 昨年、10番を背負わせてもらって、自分自身も成長できた実感がありました。チームに対しても感謝の思いがありましたし、今回の移籍は悩んで悩んで悩んだ末に決めました。サッカー選手としてプレーできる時間は限られています。その中で自分の存在を示していくためには、伝統あるチームでプレーするチャンスがあるなら、と考えました。そこで試合に出続けることで、自分の存在意義を確かめ、価値を高められると思いました。いくつかオファーをいただいた中で、鹿島はやはり魅力的で、僕自身タイトルを獲りたいし、そこに少しでも自分の力を還元できればと。タイトルを獲ることで、日本代表も見えてくるとも思っています。

――鹿島は層が厚く、ポジション争いもし烈だと感じます。そのことは移籍に際して気になりませんでしたか。

樋口 そもそもどこのチームに行っても、たとえ鳥栖に残っていても、必ずレギュラー争いはある。レベルの高い競争は自分を成長させますし、それを望んで今回の移籍も決めました。自信もあります。

――外から見ていた鹿島と実際に中に入って感じた鹿島とで何か違いはありましたか。

樋口 抱いていたのは、やはり常勝軍団というイメージです。勝ちに本当にこだわっているチームで、Jリーグの中でもその点は群を抜いている。ここに来たからには常に勝利を求められると思いますし、タイトルを求められると思っています。実際に来てみて一番感じたのは、球際の強度ですね。全然、違うというか。正直、最初はびっくりした部分もありました。

――具体的には、何がこれまでと違うのでしょうか。

樋口 まず、目の前にあるボールを絶対に相手に渡さないという気持ちが違います。そこで負けていると鹿島らしくないという受け取り方になるというか。最近、それがよく分かってきました。体を投げ出してでもこのボールを奪ってやるぞという意識をみんなが持っている。それが集団となって、素晴らしいチームになっているんだと感じます。慣れるまでに少し時間はかかりましたけど、この中でやれれば自分自身が成長できる。ケガを怖れてプレーしたら逆にケガをしてしまう、と思うようになりましたし、練習から刺激的な毎日を過ごせていますね。

――水戸とのプレシーズンマッチでは4-4-2のボランチで先発し、途中からは右サイドでもプレーしていました。サイドとボランチではプレーも役割も変わりますが、その点についてどう感じていますか。

樋口 内側の方がより生きるスタイルかなと自分では思っています。なるべく多くボールに関わって、数多くのチャンスを演出するのが特徴なので。ただ、仮にサイドでプレーするにしても外で張っているタイプではないので、中に入って起点になったり、チャンスメークしたり、そういう仕事をできれば。そこが自分に求められていると思っています。

――チャンスメーカーとしては前線とのコンビネーションも重要になります。リーグ随一の強力FW陣(鈴木優磨、エヴェラウド、上田綺世、染野唯月)との関係は深まってきましたか。

樋口 キャンプから何試合かやってみて、まずは一番前を見ることが大事だと感じました。基本と言えば基本なのですが、あれだけ強力なアタッカーがいるので、生かさない手はないと。生かすことができればチームは勝利に近づけると思います。パサーとして、しっかり役割を果たしたいです。

――プレーの中でもアシストには特別なこだわりがありそうです。

樋口 もちろんゴールとかアシストとかは見ている方も分かりやすいですし、大事にしていますが、僕自身のこだわりで言えば、すごくボールタッチを意識しています。その感触がいいと感じるときは、気持ちよくプレーできますしね。試合では、そのフィーリングを大事にしているし、こだわっています。

――正確なファーストタッチが次のプレーへの移行をスムーズにし、視野の確保にもつながっていると思います。その重要性を学んだのは鳥栖のアカデミー時代ですか。

樋口 プロになった鳥栖でも、タッチや体の向き、アングル、止める蹴るやパスは意識してやっていました。そこは鹿島に来ても生きると思っています。アカデミー時代もそうですが、プロになってより大事だなと感じて取り組んできました。去年、優勝した川崎フロンターレはそのあたりの基礎が本当にしっかりしている。鹿島とはプレースタイルは違いますけど、ベースの部分で、自分自身はあの水準まで上げないといけないと思っています。というのも自分はドリブラーではないし、体格もそんなに大きくない。じゃあ何で違いを出すのかと言ったら、ボールタッチやパスの質だと思う。そこで違いを見せないといけないので、こだわっていますね。

――ポジションを争う選手たちに対しても自分の特長としてタッチやパスの質はストロングになると感じますか。

樋口 キックにも自信がありますし、そこを練習からしっかり出していけるように取り組んでいるところです。

――その手ごたえはどうでしょう。

樋口 少なからずある、というのが正直な感想ですね。まだまだ改善しなけれいけないこともたくさんありますし、何よりチームが勝たなければ意味がないので、勝利のために、ということは前提として自分の特徴を出していきたい。自分は守備の選手ではないので、存在価値を示すには、攻撃でどれだけ違いを見せられるかだと思っています。1試合を通してどれだけチャンスメークだったり、相手にとって危険なプレーができるか。そこは求めていきたいですね。