上写真=谷口彰悟がはっきり口にしたリベンジへの思い。あの借りを返さないわけにはいかない(写真◎J.LEAGUE)
「優勝のために死にものぐるいで」
11月3日、J1第34節の浦和レッズ戦。川崎フロンターレは勝てば、2位の横浜F・マリノスがガンバ大阪に引き分け以下で、または引き分けの場合でも、横浜FMが敗れれば優勝が決まる。谷口彰悟はキャプテンとして、その大一番に「優勝は待つものではない」と意欲を隠すことなくきっちりと奪いにいくつもりだ。
浦和と言えば、ルヴァンカップ準々決勝で悲劇的な敗退を余儀なくされた相手である、という事実が思い起こされる。9月1日のアウェーの第1戦は1-1、5日のホームの第2戦では3-1と2点のリードを奪いながら、最後はアディショナルタイム4分に押し込まれて3-3。アウェーゴールの差で勝ち抜きを阻まれた。
ただその試合に、谷口は出場していない。負傷のためにリハビリに励んでいた時期だった。
続くAFCチャンピオンズリーグでも、韓国に渡って14日に蔚山現代と対戦したが、0-0からPK戦の結果、8強入りを逃した。帰国すると隔離生活に入りながら、過密日程の5連戦を戦った。今年、チームが最も苦しみ抜いた1カ月だった。浦和戦の敗退はいわばそのトリガーになったから、リベンジの思いはある。
「あの試合も悪くはなかったのに、最後にああいう形で追いつかれました。シンプルに悔しそうな選手たちの表情を見て、自分もかなり悔しい思いをしました。そのときはピッチにすら立てませんでしたから、今回にかける思いは強いです。シンプルに勝ちたいというみんなのリベンジへの思いをふつふつと感じています」
連続して2つの大会から追い出されたことで、精神的に苦しんだ。谷口はそのあとの5連戦からチームに合流し、その2戦目の鹿島アントラーズ戦でついに復帰を果たした。鬼木達監督は「勝負の5連戦」と優勝へのスパートを早めに設定し、選手たちを導いた。
「リーグではずっと1位で来ていましたから、この敗退で崩れてたまるかという反発力があったのは事実です。優勝のために死にものぐるいで戦わなければ、とスイッチが入りました。そういう空気があの5連戦にはあったと思います」
ついに王手をかけたいま、その1カ月が大きな意味を持つことになる。昨季ほど爆発的ではないかもしれないが、勝つべき試合で勝つことの大切さを、悲しい敗退から学んで果実にした。
「チームって生き物というか、誰かが抜けたらそれを埋める誰か出てきて、良いパフォーマンスをして、といういい流れができていたと思います。チームには選手個人の成長を待つ時間はありません。でも、勝ちながら成長していくことにはこだわってきました。みんなで総力戦で戦い抜いたし、苦しい時期はあったけれど、誰かがヒーローになったりしたことが大きくて、勢いを得るきっかけになったと思います。与えられた出番やチャンスを生かすことができて、みんな頼もしくなってきたなと思います」
その頼もしさはしかし、まだ完成ではない。まずはリーグ連覇、そして天皇杯優勝。2つのタイトルを手にしたとき、キャプテンは進化を遂げたフロンターレの出現を高らかに叫ぶだろう。