川崎フロンターレのスタッフ2名に続き、7月19日に選手1名が新型コロナウイルスの陽性診断を受けた。21日の天皇杯3回戦を前にした難しい時期にも、鬼木達監督が心配して電話した感染者から「すみません」と言われたことを思い出し、感極まって涙。「勝てば申し訳ない気持ちもなくなるから、勝とう」と誓った。

上写真=ACLから帰国後、最初のゲームは清水戦。鬼木達監督も「選手がしっかり力を振り絞って勝てた」(写真◎J.LEAGUE)

「本当に誰にも責任はないという話をしました」

 川崎フロンターレではスタッフ2名に続いて、7月19日に選手1名に新型コロナウイルス陽性診断が出た。チームを率いる鬼木達監督は、この難局を乗り越えるべくリーダーとして毅然と振る舞っている。

「自分がネガティブになったり負けてしまったら、戦えません。先頭を走る立場ですから、決まったことがあればすべてに全力で戦いますし、そこは選手と共有したいのでしっかりと説明しているつもりです。選手も一緒になってやってくれているのは感じています」

 状況が悪化すればそれだけ、指揮官のリーダーとしての資質が、チームを、クラブを左右する。どのような声をかけるかで、選手やスタッフの行動が決まるという責任に突き動かされているのだ。だから、選手やスタッフにどのような言葉をかけているか、という問いに、感極まって声を震わせ、涙をぬぐった。

「本当に難しいですが、誰もが可能性があった中でこういう形になってしまったので、本当に誰にも責任はないという話をしました。これだけ行動制限がある中でなったので、誰も責められません。僕は感染してしまった人に電話をしたんですけど、必ず『すみません』という言葉が返ってきて……そういう言葉を言わせるのが……すごくつらくて……(7月17日のJ1第18節)清水戦も、そういう人たちに心配をかけないようにというか、勝てば申し訳ないという気持ちもなくなるから必ず勝とうという話をして、本当に誰も責められないから頑張ろうと話をしていました」

 このチームが一つにまとまる理由の一端が、その切れ切れの言葉からにじみ出るようだった。ライバルだが仲間、と選手たちが本気でチームメートをリスペクトする思いの源泉は、ここにあるのだろう。

 7月21日の天皇杯3回戦、ジェフユナイテッド千葉戦は予定通り行われる見込みだ。2回戦ではJ3のAC長野パルセイロに先制され、アディショナルタイムにぎりぎりで追いつき、1-1からPK戦4-3で辛くも勝ち抜く結果になった。次もJ2と、カテゴリーが下のチームが相手だ。

「天皇杯は一発勝負で相手がどんどんチャレンジしてくるので、受けずに戦うのがいちばん大事なことと考えています。なかなかそこへ到達するのは難しいけれど、長野との試合もそうでしたがそれも含めてメンタル的なタフさが求められます。特にメンタルと疲労の戦いになると思いますが、それでも自分たちのサッカーで、あるいはそうではなくても勝てるように、限られた時間ですが最高の準備をしたいと思います」

 千葉は3バックが機能していて、J2ではここ4試合は2勝2分け、失点も2だけと安定している。

「やはり堅守というのがあって、特に安定しているのも見受けられます。焦れずに戦えるかどうか。前回の清水戦もそうですが、アグレッシブに戦えるかどうか。そういう意味でいうと、疲れている中でチャレンジできるかが大事になってくると思います」

 千葉ももちろん下剋上を狙うべく、準備をしてくるはずだ。苦しい状況だからこそ、改めて「勝てば申し訳ない気持ちもなくなるから、勝とう」の精神で、千葉の挑戦を堂々とはねのけるつもりだ。