明治安田生命J1リーグは7月26日に第7節を迎えるが、前日の25日にFC東京のアダイウトンがオンライン取材に対応。5節の浦和レッズ戦で移籍後初ゴールを記録するなどの好調ぶりを次の鹿島アントラーズ戦にぶつけるつもりだ。

上写真=アダイウトンは磐田時代に燃やした鹿島とのライバル心で挑む(写真◎FC東京)

「チームに貢献することが大事」

 対戦相手がこの人に「スペース」を与えたら、きっと後悔する。一気にギアをトップに入れることのできるスピードと、並走する敵を弾き飛ばすほどのパワー。軽やかさと重厚感の両方を兼ね備える肉体を神様から与えられた男にとって、目の前に広がる空間ほど素敵なものはない。

 J1第5節の浦和レッズ戦で見せた66分の追加点は圧巻だったが、続く第6節の北海道コンサドーレ札幌戦でも相手の恐怖になった。

 開始早々の7分にディエゴ・オリベイラが低い位置でボールを持ったときにはもう、右においしいスペースを見つけていた。一度、ポストプレーを受けるようなふりをして相手を誘っておいてから、そのステップの逆を行き、パスを引き出すようにしてダッシュ、すると見事なスルーパスが送り込まれてきて、右足で鋭いシュートを打ち込んだのだ。GK菅野孝憲のファンセーブにあってゴールにはならなかったが、札幌守備陣の神経をとがらせるには十分だった。

 これは相手ディフェンス・ラインの後方、いわゆる「裏」とか「奥」と言われるエリアを攻略したシーンだったが、そこにばかり警戒していてもまた、後悔するだろう。今度は「表」とか「手前」と呼ばれる場所に出没するからだ。同じ札幌戦の前半アディショナルタイムにそのシーンがある。

 ミッドフィールドでレアンドロがこぼれ球を拾って前を向いたとき、その視界の真ん中に立つようにしてポスト役になった。ワンタッチで戻すとレアンドロが強烈なミドルシュートを見舞う。左ポストに弾かれてゴールにはならなかったが、相手の最終ラインと中盤のラインの間で漂うようにポジションを取り、相手のプレッシャーがかすりもしない、いわば「特異点」を見つけたのだ。

 ポストプレーを終えたあとに足を止めることなく、シュートのこぼれ球を狙ってすかさずゴール前に入り込んだあたりは、来日以来ずっと真面目と評されてきた真摯な姿勢の表れでもある。そんな性格はオンライン会見の場でもにじみ出て、浦和戦のゴールで「重戦車」と表現されたことについては「私の名前はアダイウトンですので、これからもそう呼んでもらいたいです」と返したほど。

 子どもの頃からがっしりとした体の持ち主だったとのことだが、「もっとフィジカルを鍛えなければ。例えば長い距離をもっと走れるようにしたいです。まだまだだと思っています」と、ここでも生真面目さをうかがわせる。

 現在3位のFC東京が次に戦うのは、鹿島アントラーズ。今季はまだ1勝しかしていないが、自分と同じブラジルのDNAを宿すチームであるだけに、逆に不気味ではある。

 ここまで先発が2試合、途中出場が4試合で「どのような形で試合に出るかは監督が決めることです」と冷静だが、「鹿島戦ということでいつもと同じようにモチベーションは高いです。自分たちが精一杯チームに貢献することが大事だと思います」とここでもチームファーストへの思いを口にするのだった。