あの頃があるから今がある――。この連載では大学時代に大きく成長し、プロ入りを果たした選手たちを取り上げる。第11回は、中央大からJリーグの清水エスパルスに加入し、今季でプロ8年目を迎える六平光成だ。

文◎杉園昌之 写真◎関東大学サッカー連盟/飯嶋玲子、J.LEAGUE

自らを見つめ直して道を決めた

 2008年度の全国高校サッカー選手権で活躍したスターは、すぐさま関東大学1部リーグでも頭角を現した。前橋育英高出身の六平光成は中央大学に進み、抜群のパスセンスを発揮し、評判に違わぬプレーを披露。1年生の前期リーグから先発出場のチャンスをつかみ、2年生では名門の10番を背負った。

 評価は大学の枠にとどまらず、U-19日本代表の主将としてAFC U-19選手権に出場。準々決勝で韓国に敗れた後には大学を中退し、プロ入りも考えた。

「代表のチームメイトはみんなプロだったので。宇佐美貴史(ガンバ大阪)、茨田陽生(湘南ベルマーレ)たちからは多くの刺激を受け、僕ももっとうまくなりたいと思ったんです」

 一時期は悩みに悩んだが、自らを見つめ直して歩むべき道を決めた。

「僕は大学で結果らしい結果を残していない。まずは自分の与えられた環境でベストを尽くしたい」

 大学では持ち前のパスワークに磨きをかけた。大学3年時はケガに苦しんだものの、最終学年になると伸び伸びプレー。お気に入りの背番号7をつけて、ピッチを躍動した。一時期はロンドン五輪の代表入りを意識するあまりゴールにこだわり、自分のリズムを崩したこともあったが、すぐに気づいた。

「自分らしさを出すためにはどうすればいいのか、じっくり考えました。僕は中盤でゲームをつくるのが好きだし、そこにサッカーの楽しさを見いだしています。やるからには楽しくないと。僕のパスで勝負を決められれば最高です」

 12年後期リーグのパフォーマンスは圧巻だった。簡単にパスをはたきながら、巧みにゲームをコントロール。中盤でピタリとボールを止めて前を向くと、面白いようにスルーパスを通した。

 清水エスパルスの練習に参加し、小野伸二(現・琉球FC)から受けた影響も少なからずあった。大学4年生のときに目を丸くしながら、先輩のプレーを称賛していた。

「小野さんのトラップは本当にすごい。あらためてうまいと思いました。どれだけプレッシャーがかかっても余裕なんですよ。あれを見て、僕も意識が変わりました」