上写真=J1開幕戦で得点を挙げてポーズをとるオルンガ(写真◎Getty Images)
文◎北條 聡
天は二物ならぬ五物を与えた
クモンガと言えば、ゴジラの右眼を潰した巨大蜘蛛。これに負けず劣らずの怪物――いや、怪人が柏レイソルの巨大ゴール量産機オルンガだ。
日本上陸から3年。ついにJ1の舞台で大暴れする時がやって来た。いや、すでに北海道コンサドーレ札幌との開幕戦で2ゴール。まるで紅白戦でもやっているように、やすやすとゴールネットを揺らしてみせた。
天は二物を与えず――と言うけれど、この人の場合は例外だ。二物どころか、三物も四物も、いや五物も持っている。ざっと見積もっても高さ、速さ、強さに恵まれ、おまけに巧さまであるのだから、守る側はたまったものではない。
事実、身長は193センチ。さすがに大巨人とまでは呼べないが、こと日本では制空権を独占するのに十分な高さだろう。スピードは見た目以上に速く、頑強な肉体は岩のごとし。しかも、懐が深く、ボールを器用に操って寄せ手を出し抜いてみせる。利き足の左から放つ一撃は大砲だ。
その上、駆け引き上手でもある。味方と企図を共有しながら敵のゴールへ迫る賢さまで備えているとあっては、どんな相手もお手上げだろう。そりゃ1試合に3点でも4点でも――いや、昨季の京都サンガ戦では新記録の8点だったか……。ともあれ「入れ食い」状態なのである。
多種多様な強みを持つ理屈から言えば、現在のJ1で最も多彩なゴールパターンを持つ点取り屋だろう。
地上戦では裏抜けから一騎駆け、空中戦では二階から振り下ろすヘッドからアクロバットなボレーに至るまで何でもござれ。少々ポイントがずれても、強引にフィニッシュまで持っていける。万事、無理が利くタイプなのだ。
昨季はJ2とはいえ、30試合に出場し27得点を量産。そこに京都戦での固め取りが含まれていることを考えると、J1では20点前後――というのがリアルな見立てかもしれない。
だが、実際には上方修正が必要なんじゃなかろうか。空前のスペックはもとより、昨季以上のゴールラッシュを予感させる理由が2つあるからだ。