上写真=キックオフカンファレンスで思いを語った橋本拳人(写真◎J.LEAGUE)
ソロデビュー!
次から次へと押しかける報道陣の質問に、長谷川健太監督とMF橋本拳人がせわしなく答え続けていく。2月14日に東京都内で行われたJリーグキックオフカンファレンス。毎年のように開幕戦で対戦する2チームのブースが横並びになり、清水エスパルスの向かって右に設置されたFC東京のエリアでは2人が座り、その向こうに、ホーム開幕の横浜F・マリノス戦や続く浦和レッズ戦などの開催を告知するポスターが飾ってあった。
こういう類のものは、複数の主力選手が並べられてデコレーションされたデザインが定番なのだが、そこにあったのはちょっと違っていて、だからつい、二度見してしまった。
橋本拳人しかいないのだ。
全部で36選手それぞれのバージョンがあるというが、斬新なデザインだったので、つい聞いてしまった。「ポスター、すごいですね。一人だけなんですね」。
「いやあ、ついにソロデビューしちゃいましたね!」と笑ったのは拳人流の余裕の表れだと思ったのだが、一瞬で表情を引き締めてから続けた言葉を聞いて、その印象を改めた。
「期待されていると感じますし、チームを引っ張っていかないといけないなと思います。勝利に貢献する選手になりたいんです。ゲームを左右するプレーを見せて、攻撃でも守備でも存在感を出したい」
存在感――。それが「KENTO2020」のキーワードになりそうだ。
一番難しいポジション
終盤に横浜F・マリノスに逆転されて、念願のリーグチャンプの座に座り損ねた2019年。長谷川健太監督はその大きな反省の一つとして、サイドアタッカーの得点力が不足していたと分析している。
レアンドロ、アダイウトンの獲得がそのダイレクトな解決策だったのだが、もう一つ着手したのがフォーメーションの変更だ。昨季のベースの4−4−2に加えて4−3−3を採用し、2月11日のアジア・チャンピオンズリーグの蔚山現代戦で披露したのが、最前線の中央にアダイウトン、右にディエゴ・オリベイラ、左にレアンドロを並べる、見るからに派手な布陣だった。長谷川監督の言う「2トップで完結していた昨季の攻撃からのプラスワン」をピッチに描くために、攻撃力を最大化するチャレンジの象徴である。
新システムは去年よりもパワーアップできそうですか、と長谷川監督に聞いてみると「それはシーズンに入ってみないと分からないですよね」と、意外というか、慎重な答えだった。代わりに明確に自信を口にしたのはアンカーのポジションについてだった。
「4−3−3だとアンカーが一番難しいですよね。ここがポイントになると思います。よくやってくれていますよ」
その一番手が、橋本拳人だ。