マリノスのJ1優勝は15年ぶりだが、横浜で優勝を決めたのは16年ぶり。前回2003年と今回の優勝決定試合には、GKをめぐる不思議な共通点があった。どちらも現場で取材した筆者が、前回と今回の思い出を振り返る。

横浜に来ていた、あのときのGK

 横浜にシャーレが輝いた日の、時を超えて重なったGKのドラマ。昔を振り返り、今を追いかけながら取材をしている途中に、思わぬ人物に遭遇した。

 取材エリアからピッチレベルへと向かう階段を上っていると、あのとき、16年前に退場処分を受けた榎本がいたのだ。現在は富山でプレーしており、今季限りで現役を退く栗原勇蔵のセレモニーにサプライズ登場して花束を渡すため、静かに身を潜めていた。
 
 16年前、当時20歳の榎本は試合後に大泣きしていた。退場でチームメイトに迷惑をかけたことへの後悔、それでも優勝を勝ち取ってくれたことへの感謝。いろいろな思いが入り混じっていたのだろう。

 横浜FMの後輩が退場し、緊急出場する様子を、36歳になった守護神はどんな心境で見つめていたのか。話を聞いてみたかったが、セレモニーの様子を見ると出番間近のようだったので、やめておいた。

取材・文◎石倉利英 写真◎佐藤博之、田中慎一郎、J.LEAGUE

16年前のキャプテン・奥大介が受け取ったのはセカンドステージ優勝のトロフィー。最初にシャーレを掲げたのは中澤佑二だった(写真◎J.LEAGUE)

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